見た目はそっくりでも細胞への侵入経路は違う―人工ナノ粒子と、細胞が自然に放出する小胞の違いをタンパク質から読み解く―

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概要

 私たちの体内では、エクソソームをはじめとする細胞外小胞が、産生した細胞のタンパク質や核酸などを運ぶことで、受容した細胞に情報を届けていることが知られています。細胞外小胞は細胞由来の膜に包まれているため、生体になじみやすく、薬や機能性分子を目的の細胞へ届けるナノキャリアとして注目されています。一方、細胞が自然に分泌する細胞外小胞は大量に集めにくいため、細胞を機械的に加工して作る細胞由来ナノベシクル(CDN)が代替候補として開発されています。しかし、CDNが自然に分泌される細胞外小胞と同じ仕組みで細胞に取り込まれるかは、十分に分かっていませんでした。

 京都大学大学院薬学研究科の金尾英佑助教、石濱泰教授、同大学大学院工学研究科の水田涼介助教、佐々木善浩教授、同大学高等研究院 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)の秋吉一成特定拠点教授(研究当時:大学院医学研究科)、理化学研究所生命医科学研究センタープロテオーム恒常性研究ユニットの今見考志ユニットリーダーらの共同研究グループは、人工的に作製したCDNと、天然に存在する細胞外小胞が細胞に取り込まれる経路を、それぞれのナノ粒子と受容細胞の双方のプロテオーム情報を読み解くことで同定する新しい計測技術を開発しました。その結果、サイズや表面電荷がよく似た両者でも、構成するタンパク質成分や受容細胞との接触の仕方が異なることを明らかにしました。また、両者に共通する基本的な取り込み候補としてマクロピノサイトーシスを捉えるとともに、CDNではクラスリン依存性またはCLIC/GEEC関連の経路を含む複数の経路が関わる可能性を示し、CDNが天然の細胞外小胞よりも多様な経路で細胞へと取り込まれることを明らかにしました。この成果は、狙った細胞へ届きやすいナノキャリアを設計し、高精度な細胞操作技術や治療技術を実現するための情報計測基盤になると期待されます。本研究成果は、2026年9月2日にSmall Methodsのオンライン版にて掲載されました。

画像
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ナノ粒子の取り込み経路を調べる本研究の計測法。イラストはBioRender.com.で作成。

研究者のコメント

「ナノベシクルを“荷物”、受容細胞を“届け先”に例えると、粒子表面のタンパク質は荷札、細胞側のタンパク質は表札に相当します。本研究では荷札と表札の両方を読むことで、見た目がそっくりの荷物でも、細胞側の受け取り口が異なる可能性を双方のプロテオーム情報を読み解くことで明らかにしました。今後は、本手法で得られる情報を基盤に、人工ナノ粒子を使った高精度な細胞操作技術や治療技術の開発を進めていく予定です。」

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1002/smtd.71014

【書誌情報】
Eisuke Kanao, Ryosuke Mizuta, Saki Tarao, Yukika Hara, Yuka Li, Kazunari Akiyoshi, Yasushi Ishihama, Koshi Imami, Yoshihiro Sasaki (2026). Proximity Proteomics Maps Candidate Cellular Uptake Pathways for Cell-Derived Nanovesicles. Small Methods, e71014.