深海生物の生息深度を分かつ「見えないベール」~2新種を含む3種の深海生小型甲殻類の海溝内での深度別分布を報告~

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概要

 北海道大学大学院理学研究院の太田瑞希JSPS特別助教、角井敬知講師、東京大学大気海洋研究所の小島茂明教授、京都大学フィールド科学教育研究センター(瀬戸臨海実験所)の下村通誉教授の研究グループは、ミズムシ亜目等脚類(ワラジムシの仲間)の複数種の分類学的実体と、深海における深度別分布パターンを報告しました。

 今回、太田JSPS特別助教らは、学術研究船白鳳丸、新青丸の航海により日本近海の水深2,889から7,288 mから採集されたIlyarachna(イリヤラクナ)属ミズムシ類の研究を行い、3種が含まれること、うち2種が名前のついていない種(つまり新種)であること、DNA配列情報から3種が遺伝的に非常に近縁であることを示しました。見出された3種は生息水深帯が異なっており、Ilyarachna(イリヤラクナ)cf.  kussakini(クサキニ)という既知種に類似した1種はおおよそ漸深海帯(2,886から3,519 m)に、新種Ilyarachna(イリヤラクナ)abyssalis(アビサリス)は深海帯(4,026から6,131 m)に、新種Ilyarachna(イリヤラクナ)hadalis(ハダリス)は超深海帯(5,976–7,285 m)に分布していました。

 漸深海帯、深海帯、超深海帯という各深海区分に異なる種が生息することで、複数の深海区分にわたった分布を示す動物群は多く知られています。しかし本研究のように遺伝的にごく近縁な3種が深海区分ごとに棲み分けていた例は過去に報告がありません。本研究成果は深海において種がどのようにして隔離されて分化し多様化するのかを理解する上で、非常に重要な成果と言えます。

 なお、本研究成果は、2026年6月26日(金)にDeep-Sea Research Part I誌にてオンライン公開されました。

画像
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日本近海から得られた3種のIlyarachna属ミズムシ類とその分布。
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.dsr.2026.104719

【書誌情報】
Mizuki Ohta, Keiichi Kakui, Shigeaki Kojima, Michitaka Shimomura (2026). Three Ilyarachna species (Isopoda: Asellota: Munnopsidae) showing different bathymetric distributions in Japan and Kuril-Kamchatka Trenches, with descriptions of two new species. Deep Sea Research Part I: Oceanographic Research Papers, 230, 104719.