研究者情報
研究者名
Yuuki Sato
研究者名
上高原 浩
概要
セルロースはカーボンニュートラルに貢献する材料として重要性が再認識されています。化学修飾によるセルロース誘導体の合成法は限られており、得られる材料の性質は限定されています。しかし、石油由来高分子の使用量削減を目標とし、多様な性質を持つ新たなセルロース誘導体の合成法開発が期待されていました。
農学研究科森林科学専攻の佐藤佑樹博士後期課程学生、上高原浩教授、株式会社ダイセル研究開発本部バイオマスイノベーションセンターの西尾直高主席研究員は、市販のセルロースアセテートから還元的脱酸素化によりエチルセルロースを合成することに成功しました。得られたエチルセルロースの化学構造は市販品とは異なり、材料の物性も異なりました。得られたエチルセルロースを合成する場合、本研究で開発した方法は、工程が短く有利であることもわかりました。
還元的脱酸素化によりセルロース誘導体を合成する戦略は、セルロースのみならず、様々な多糖、オリゴ糖、単糖に適用可能です。本研究により開発された合成法が、これまで合成困難であった糖化合物に適用され、最終的にカーボンニュートラルに貢献することが期待されます。
本研究成果は、2026年8月10日に国際学術誌「Carbohydrate Polymers」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「私は、学生の頃から一貫して、セルロース、およびセルロース誘導体の合成に従事してきましたが、セルロース誘導体に導入される官能基の位置の違いがその物性に大きな影響を与えることを目の当たりにしてきました。一般的に糖化合物の合成には、一時的保護基の導入と選択的な除去が大きな役割を果たします。一方、全く異なるアプローチとして、酸化反応を利用したセルロース誘導体の合成法は、様々報告されてきました。15年程前よりセルロース誘導体合成法の幅を広げたいと考え、還元反応を利用した合成法の開発についてアイディアを温めておりました。立場的に自分自身で実験する時間を確保することが難しくなりましたが、博士後期課程の佐藤佑樹さんと共に研究を開始し、彼の綿密な実験と努力により、長年の目標であったセルロースエステルからセルロースエーテルへの変換反応を確立することが出来ました。」(上高原浩)
【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.carbpol.2026.125750
【書誌情報】
Yuuki Sato, Naotaka Nishio, Hiroshi Kamitakahara (2026). Synthesis and properties of ethyl cellulose preferentially substituted at C6 position via metal-catalyzed reductive deoxygenation of commercial cellulose triacetate. Carbohydrate Polymers, 125750.