海上竜巻は上陸後直ちに弱まるわけではない―移動速度の違いで竜巻の強さが維持される―

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公開日

研究者情報

研究者名

佐藤 宏樹

概要

 竜巻は、局所的に回転性の猛烈な風を引き起こす気象現象です。日本の竜巻は、海上で発生するもの(海上竜巻)を含めると、年間50件程度確認されています。日本の市街地の多くは沿岸域の平野部に広がっていることから、竜巻の上陸後の挙動を把握することは、災害を予測・防止する上で大切です。京都大学の佐藤宏樹 理学研究科博士後期課程学生(研究当時、現:名古屋大学研究員)と竹見哲也 防災研究所教授の研究グループは、計算機シミュレーションにより、海上竜巻が上陸した後の強さや形の変化の仕組みを明らかにしました。

 シミュレーションでは、竜巻の移動の速さや市街地での建物の密集度合いの組み合わせを変えて、地面の摩擦が竜巻に及ぼす作用を調べました。竜巻が低速で移動する場合(時速約5.8 km)では、竜巻へと流れ込む気流が障害物によって乱されることで回転の強さが小さく、竜巻が弱まります。ところが、竜巻が中程度の速さで移動する場合(時速約29 km、日本の竜巻の平均的な移動速度)には、地面摩擦の影響で作られた渦が効果的に竜巻に取り込まれることで、竜巻の強さが維持されます。さらに高速で竜巻が移動する場合(時速約58 km)には、地面摩擦の影響で竜巻の構造が崩れてしまい、竜巻は急速に弱まってしまいます。しかし、竜巻が大きくて強くなると、どんな移動速度の場合であっても、上陸後に強まる場合もあります。このように、竜巻の移動速度の違いによって、海上竜巻の上陸後の強さの変化の仕方が変わります。本研究により、陸上での地面摩擦が竜巻に及ぼす作用は竜巻の移動速度によって異なることによることが明らかになりました。

 本研究成果は、2026年7月29日午前11時(米国東部時間)に米国気象学会の国際学術誌Journal of the Atmospheric Sciencesにオンライン掲載されました。

画像
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イラスト:佐藤宏樹

研究者のコメント

「日本の沿岸域は、都市が広がっていたり、工場や発電所など工業地帯が展開していたり、原子力発電所が立地していたりと、災害に対する脆弱性の高い場所です。日本における強風災害は、台風・低気圧・竜巻といった現象によって生じます。中でも竜巻は、発生頻度は高くはないものの、一度強い竜巻が発生すると被害は激甚なものになります。また、台風により竜巻が発生する場合もあります。こういった竜巻は海上で発生する場合が多いことから、竜巻の上陸後の振る舞いを理解することが科学的にも実用的にも大切です。さらに、稀な現象ですが、地震被害後の竜巻の発生といった複合的な要因による災害の激甚化に対する想定も必要だと思います。日本のように、気象災害、地震災害、火山災害といった多様な自然災害の発生地では、複合災害の視点はますます重要になってきます。」(竹見哲也)

「竜巻は大学の理学部の気象学分野、工学部の風工学分野のそれぞれから研究されています。私は理学部の所属でしたが、工学部で行われている竜巻研究に近い手法で研究を行いました。特に、計算機の中に仮想的な実験装置を作成して動かすことに楽しみを感じました。自然現象を模型として再現する、理学と工学の良いとこ取りのような研究を今後も続けていければと思います。」(佐藤宏樹)