研究者情報
研究者名
Hanako Ikeda
概要
京都大学大学院医学研究科客員研究員・大阪医科薬科大学眼科学教室特務教授 池田華子、京都大学大学院医学研究科 井上由美研究員らの研究グループは、慶應義塾大学薬学部教授・理化学研究所生命医科学研究センターチームディレクター 有田誠、および京都大学iPS細胞研究所(CiRA)との共同研究にて、希少な遺伝性網膜疾患であるMalattia Leventinese(MAL)の病態を解明し、新たな治療法につながる可能性を示しました。MALは思春期頃から網膜にドルーゼンと呼ばれる沈着物が生じ、進行すると視力低下を来す疾患です。原因となるEFEMP1遺伝子変異は知られていましたが、なぜ網膜が障害されるのかは十分に解明されていませんでした。本研究では、患者由来iPS細胞から作製した網膜色素上皮細胞を用いて病態を再現し、変異タンパク質Fibulin-3の蓄積に加え、細胞内の不要物を分解する「リソソーム」の量と機能が低下していることを発見しました。この異常により、ApoEや補体成分などを含むドルーゼン様沈着物が形成され、細胞死や組織障害が進行することが明らかになりました。さらに、リソソーム機能を活性化するトレハロースを投与すると、リソソーム機能が回復し、沈着物の形成や細胞死が抑制されました。これらの成果は、リソソーム機能障害がMALの主要な病因であることを示すとともに、MALや加齢黄斑変性などドルーゼンを伴う疾患に対する新たな治療戦略につながる可能性を示しています。
本研究成果は、2026年7月22日正午(米国東部夏時間)に国際学術誌「JCI Insight」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「Malattia Leventineseは非常に希少な疾患であり、患者数も限られているため、その病態研究は容易ではありません。本研究では患者さん由来のiPS細胞を用いることで、これまで十分に分からなかった病気の仕組みを再現し、リソソーム機能障害という新たな病態の中心的役割を明らかにすることができました。希少疾患の研究から得られた知見が、加齢黄斑変性をはじめとするより多くの患者さんが罹患する網膜疾患の理解や新規治療法の開発につながることを期待しています。」