研究者情報
研究者名
村上 一馬
Thi Hong Van NGUYEN
杤尾 豪人
概要
京都大学大学院農学研究科食品生物科学専攻の村上一馬 准教授、Nguyen Thi Hong Van 日本学術振興会外国人特別研究員らの研究グループは、レビー小体型認知症やパーキンソン病などの原因となるα-シヌクレイン(αSyn)タンパク質の異常な凝集を抑える新しい核酸分子を開発しました。本研究は、杤尾豪人 京都大学理学研究科教授、水口賢司 大阪大学蛋白質研究所教授、Gal Bitan 米国UCLA教授らとの国際共同研究です。αSynは本来、神経細胞で働くタンパク質ですが、異常に凝集すると脳内を伝播し、神経細胞に障害を引き起こします。現在の治療はドパミン補充など症状を和らげるものが中心で、病気の進行そのものを抑える方法は限られていました。本研究では、αSynの天然変性領域に結合する核酸医薬・RNAアプタマー1を開発し、αSynの凝集病態を直接抑制することに成功しました。このRNAアプタマーは、αSynが小さな凝集体や線維状構造を形成する過程を阻害するだけでなく、すでに形成された凝集体を分解する作用も示しました。また細胞実験ではαSyn凝集体の伝播や細胞毒性を抑制し、ショウジョウバエを用いた実験では運動機能障害や神経変性を改善しました。さらに、核磁気共鳴(NMR)解析や計算科学実験により、その作用機構の一端を明らかにしました。本成果は、RNAアプタマーを用いて病因タンパク質を制御する新しい治療戦略につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年7月15日に国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「αSynのような天然変性タンパク質は構造が定まりにくく、従来の創薬では標的化が難しいと考えられてきました。本研究では、その柔軟な領域をRNAアプタマーが認識し、凝集そのものをほどく可能性を示すことができました。1014種類を超えるRNA候補の中から、“当たり”となるRNA配列を見いだせたことは、大きな驚きでした。今回の成果が、シヌクレイノパチーに対する新しい治療戦略や、凝集性タンパク質研究の発展につながることを期待しています。」(村上一馬 )
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-026-75209-z
【書誌情報】
Kazuma Murakami, Thi Hong Van Nguyen, Leo Tsuda, Esha Chawla, Yangxia Wang, Yiran Chen, Nadia Stefanova, Chioko Nagao, Kenji Mizuguchi, Shouvik Manna, Samir K. Maji, Hidehito Tochio, Gal Bitan (2026). Development of an RNA aptamer as a therapeutic agent for synucleinopathies. Nature Communications.