脳は、進行波を介して情報針路をガイドする―意識がある時、脳内通信は安定し信頼できる―

ターゲット
公開日

研究者情報

研究者名

Kaio Misawa

概要

 ニューラルネットワークの発展と共に、神経情報(neural information)という言葉が、便利に使われるようになりましたが、その意味は、むしろ曖昧化しています。そもそも脳科学において定義される「神経信号」に、情報理論で定義される「情報」は、運ばれているのでしょうか。京都大学大学院人間・環境学研究科 三澤魁旺 研究員、小村豊 教授らの研究グループは、神経信号と情報の流れが、どの程度、結びついているかを評価できる、情報チューニングという枠組みを考案しました。まずシミュレーションでは、計算素子間を波の様に伝搬する進行波が存在するだけでは、情報伝達は保証されない事が分かりました。しかし生体脳では、大脳皮質上を伝搬する進行波の方向に沿って、情報が選択的に流れている(情報チューニングが起きている)事が確認されました。さらに覚醒時の脳は、麻酔状態に比べて、情報チューニングが鋭くなっていました。麻酔をかけると、意識が無くなりますが、その機構は謎です。本研究は、神経科学と情報科学を架橋するアプローチから、意識・無意識を弁別できる可能性を示しています。本成果は、2026年7月10日、Cell Pressが刊行する分野横断型・国際誌「iScience」にオンライン掲載されました。

画像
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電気信号が波の様に伝搬する「進行波」と、情報理論で定義される「情報の流れ」の同調性を評価。計算モデルvs脳および、覚醒vs麻酔状態の情報通信の違いが明らかになった。(イラスト:京大・小村研究室)

研究者のコメント

「広域脳からのECoG記録は、ラボにとって初挑戦でした。ラボ外の方々の協力も得て、その技術をハンドリングできる様になった事が、第一の喜び。第二の喜びは、行動課題に依存せず、情報を定義できると気づけた事。そこから、神経信号と情報伝達の結びつきが変化する動態を目にした時、大きな意義を実感しました。この実感が論文によって伝わると嬉しいのですが、今後も、自然知能の奥行を楽しめる仲間達と、新たなneural informationの姿を発掘していきます。」(小村豊)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.isci.2026.116728

【書誌情報】
Kaio Misawa, Koji Chinen, Akira Kawabata, Taro Kaiju, Takafumi Suzuki, Yutaka Komura (2026). Awake cortex stabilizes traveling waves for global and reliable information routing. iScience, 29, 8, 116728.