乳がんの悪性度を決める代謝バランス―細胞内BCAA濃度によるがん幹細胞の制御―

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公開日

研究者情報

研究者名

Takahiro Ito

概要

 がん組織の中には、自分自身を複製して腫瘍を新たに作り出す「がん幹細胞」が一部存在し、がんの再発や転移の原因になると考えられています。京都大学医生物学研究所 松浦顕教 助教、服部鮎奈 准教授、伊藤貴浩 教授らの研究グループは、有効な治療薬の少ないトリプルネガティブ乳がん(TNBC)において、分岐鎖アミノ酸(BCAA)という栄養素の代謝が、がん幹細胞の性質を左右していることを明らかにしました。

 研究グループは、生きた細胞1個ごとにBCAA濃度を測れるバイオセンサー「OLIVe」を用い、がん組織の中で細胞ごとにBCAA濃度が大きく異なること、そしてBCAA濃度の高い細胞にがん幹細胞が多く含まれることを発見しました。さらに、BCAAを作る酵素BCAT1の働きが強まる一方、BCAAを分解する働きが弱まることで高いBCAA濃度が保たれ、これが悪性度を高めていることを突き止めました。

 本成果は、細胞内のBCAA代謝を標的とする新しい乳がん治療の可能性を示すものです。本研究成果は、2026年7月8日に米国の国際学術誌「Cell Reports」にオンライン掲載されました。

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claudin-low型のトリプルネガティブ乳がん細胞はBCAA代謝に高い依存性を示し、腫瘍組織の内部では細胞ごとに異なるBCAA濃度を示す不均一性がみられました。BCAAバイオセンサーのOLIVeによってBCAA濃度の高い細胞と低い細胞を分離することで、BCAA濃度が高い細胞は高い腫瘍形成性を有することを示しました。BCAA濃度が高い細胞では、BCKAからBCAAの生合成が亢進しており、その代謝変化にBCAT1の発現上昇と、下流のBCKDH複合体の抑制が関与することが分かりました。(作成者:松浦 顕教)
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