医療イメージング材料開発に新指針―金ナノクラスターの発光特性を自在に設計―

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 大田航 福井謙一記念研究センター特定助教、佐藤徹 同教授、縄田拓己 大阪大学博士後期課程学生、坂本雅典 同教授らの研究グループは、金ナノクラスターの表面を覆う配位子との相互作用を利用することで、その発光特性が制御可能であることを見出しました。

 金ナノクラスターは、数個から数百個ほどの金原子が集まった、非常に小さな粒子です。生体への負担が小さく、体の組織を通り抜けやすい「近赤外光」を出して光ることから、体内を観察する際の目印(生体プローブ)への応用が期待されています。

 また、金ナノクラスターは、エネルギー的に近接した複数の励起状態を形成し、それに起因した特異な発光挙動が見られます。しかし、これらの励起状態を意図的に設計し、発光特性を制御するための指針はこれまで確立されていませんでした。

 本研究では、金原子36個(Au36)からなる同じ構造の金ナノクラスターを用意し、電子の性質が異なる3種類の配位子を導入することで、それぞれ異なる発光状態が形成され、発光特性が変化することを見出しました。理論計算により、この発光特性の違いが配位子と金ナノクラスターのエネルギー状態の関係に起因することを明らかにしました。

 本研究の成果は、配位子を利用して、金ナノクラスター本体の構造を変えることなく、その発光特性を意図的に設計できる可能性を示すものです。将来的に、特異的な発光特性を利用し、生体内を観察するためのイメージング材料や、温度・酸素など環境応答性を活かしたセンシング材料の設計に新たな道を拓く成果といえます。

 本研究成果は、2026年6月4日に、国際学術誌「The Journal of Physical Chemistry C」に掲載されました。

画像
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理論計算された各Au₃₆(SR)₂₄クラスターのエネルギー準位図

研究者のコメント

「金ナノクラスターは、金原子と有機配位子からなる有機―無機ハイブリッド材料です。金ナノクラスターの発光特性を制御するためには、金核の核数と構造のみならず、配位子の特性を積極的に活用する必要があります。本研究では、配位子の軌道準位が金ナノクラスターの発光特性を決定するうえで重要な役割を担うことを示しました。配位子は金核に比べて柔軟に設計・変更できるため、配位子によって金ナノクラスターの物性を制御することができれば、これまで以上に金ナノクラスターの可能性を広げることができると考えています。」(縄田拓己)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1021/acs.jpcc.6c02745

【書誌情報】
Takumi Nawata, Wataru Ota, Tohru Sato, Masanori Sakamoto (2026). Orbitals of Molecular Ligands Control the Luminescent Excited States of Gold Clusters. The Journal of Physical Chemistry C, 130, 24, 8410-8416.