山本隆文 理学研究科教授(研究当時:東京科学大学特定教授)、西久保匠 東京科学大学特定助教(兼:神奈川県立産業技術総合研究所常勤研究員)、東正樹 同教授、ケネス・ポッペルマイヤー 米国ノースウェスタン大学(Northwestern University)教授らの研究グループは、加熱すると体積が収縮する「負熱膨張」という性質を持つペロブスカイト型酸化物 BiNi1-xFexO3の、安全かつクリーンな新しい合成手法を開発しました。
負熱膨張材料は、半導体製造装置や光学機器といった極めて高い精度が求められる分野での活用が期待されていますが、負熱膨張材料BiNi1-xFexO3の従来の合成では、有害な窒素酸化物(NOx)の排出や爆発のリスクを伴う酸化剤の使用が避けられず、安全性・環境負荷の面で大きな課題がありました。
本研究では、逆共沈法と次亜塩素酸イオン(ClO-)による同時酸化を組み合わせた新プロセス「共沈酸化同時プロセス」を開発しました。高度に酸化された非晶質前駆体を用いることで、酸化剤を添加することなく、短時間かつ低温での合成に成功しました。また、この手法によって材料の微粒子化が可能となり、広い温度範囲で安定して機能する優れた負熱膨張特性を引き出すことに成功し、さらに、他の機能性酸化物の合成にも応用できることも見いだしました。今回の研究成果は、半導体製造装置や光学機器などの分野において、より広範囲かつ安定した熱膨張制御を実現し、機器のさらなる高性能化に寄与するだけでなく、高温超伝導体をはじめとする他の機能性酸化物の合成にも応用可能です。
本研究には、ノースウェスタン大学のライアン・パウル博士、廣岡孝聡 東京科学大学大学院生(研究当時)、松野夏奈 同大学院生(研究当時)、前林航紀 同大学院生(研究当時)、森茂生 大阪公立大学教授、笠井秀隆 同准教授、丁炯 同特任研究員が参加しました。
本研究成果は、2026年6月18日に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載されました。