地殻変動が活発な地域の山地は、断層活動などによる隆起と、河川や斜面での侵食が並行して進むことで、長い時間をかけてその姿を変えていきます。山地の発達過程を明らかにすることは、地形がどのように、どれほどの時間をかけて形成され、侵食や土砂生産が進むのかを理解するうえで重要です。近年では、地形変化を数理モデルで表し、現在の山地の形態情報から過去の隆起履歴や地形発達史を復元する研究が進められています。しかし、理論に基づく演繹的な計算が、実際の長期的な地形変化をどの程度まで正確に再現できているのかを、時系列的かつ定量的に検証することは十分に行われていませんでした。
太田義将 理学研究科博士後期課程、松四雄騎 防災研究所教授、元・兵庫県立人と自然の博物館および蒜山地質年代学研究所の加藤茂弘氏、松崎浩之 東京大学総合研究博物館教授らによる研究チームは、堆積物中の石英に蓄積された宇宙線生成核種10Beに着目し、兵庫県南東部の六甲山地と大阪湾を対象に、隆起山地の長期的な地形発達史の復元と検証を行いました。現在の六甲山地から得られたデータに基づいて、過去150万年間の隆起履歴と地形発達史を復元し、流域から排出される河川砂中の10Be濃度の時間変化を計算して、これを大阪湾神戸沖で掘削された深層ボーリングコアの10Be濃度プロファイルと比較したところ、両者はおおむね一致しました。これにより、モデル計算によって復元された隆起山地の地形発達史を、堆積物記録から時系列的かつ定量的に検証することができました。
本研究成果は、2026年6月12日に、国際学術誌「Earth and Planetary Science Letters」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「堆積物から過去の侵食環境を読み解くには、山地で削られた土砂が、いつ、どこへ運ばれ、保存されたのかを特定できることが重要です。本研究では、六甲山地と大阪湾が近接しており、大阪湾側の継続的な沈降によって、六甲山地から運ばれた土砂が100万年以上にわたって厚く保存されていることに着目しました。また、地球規模の気候変動による海水準変動に伴って堆積した海成粘土層を、年代を決める手がかりとして利用できたことも,重要な鍵となりました。」