恒星フレアの鉄輝線はどう生じるのか?―X線と紫外線の同時観測で起源を特定―

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 井上峻 理学研究科博士後期課程学生、榎戸輝揚 同准教授、岩切渉 千葉大学助教、木村智樹 東京理科大学准教授、野津湧太 米国コロラド大学(University of Colorado)研究員、吉岡和夫 東京大学准教授らの研究グループは、米国航空宇宙局(NASA)のX線望遠鏡「NICER」と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の紫外線望遠鏡「ひさき」による、おひつじ座UX星の多波長連携観測を実施し、恒星フレアの鉄Kα輝線の放射機構を光電離と特定することに成功しました。

 太陽・恒星フレアが起きた際には、高エネルギー電子により遷移層・彩層の順にガスが加熱され、紫外線・連続X線が放射されます。また、フレアの際には「鉄Kα輝線」と呼ばれる特徴的なX線が観測されることがあります。この輝線は、光球と呼ばれる星表面のガス中に存在する鉄イオンのK殻電子(主量子数n=1)が外的な要因ではじき出される(電離)と放射されます。電離の過程には、(1)フレアの高温プラズマから放射されたX線光子による光電離、(2)フレア開始時に加速された高エネルギー電子による衝突電離、の2つの説が提案されてきましたが、どちらが主要な機構なのかは、長年の謎でした。今回、本研究グループは、おひつじ座UX星で発生したフレアにおいて、紫外線のピークがX線のピークより約1.4時間早く現れていることを発見しました。さらに、鉄Kα輝線の強度ピークが、高エネルギー電子による遷移層の加熱に対応する紫外線の放射ではなく、高温プラズマからの連続X線の放射ピークと一致していることを明らかにしました。これは、鉄Kα輝線の放射機構という、日本の「ひのとり」衛星により太陽の鉄Kα輝線が初めて観測された1980年代以来の謎に対し、主要機構が光電離と結論づける決定的な証拠となります。さらに、この解明は、鉄Kα輝線を用いた巨大恒星フレアの発生場所や幾何構造の特定という新たな展開にも繋がります。

 本研究成果は、2026年4月27日に、国際学術誌 「The Astrophysical Journal」にオンライン掲載されました。

画像
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本研究の概要図。おひつじ座UX星で発生した恒星フレアを「NICER」と「ひさき」衛星で同時観測することで、X線・紫外線の時間変化を調べ、連続X線と鉄Kα輝線のピークの一致を捉えた。

研究者のコメント

「鉄Kα輝線の放射機構という太陽・恒星フレアの長年の未解決問題が、その主な観測対象が太陽でも恒星でもない『ひさき』衛星とNICERの連携によって解かれた点は、特筆に値すると思います。本研究成果が、XRISM衛星やLAPYUTA衛星といった今後のX線・紫外線衛星での恒星フレア・系外惑星の研究に繋がることを期待しています。」(井上峻)

「『この星、面白いはずなのでちょっとやってみません?』というお願いに対して呼応してくれた『ひさき』チームとNICERチームに感謝です。紫外線とX線の明るさの時間変化を比べてみて期待通りにばっちりピーク時刻がずれているのを最初に確認した時の感動はひとしおで、こういうのを経験してしまうとなかなか研究者は辞められません。』(岩切渉)

「本来は惑星の大気やオーロラを観測する専用の宇宙望遠鏡として打ち上げた『ひさき』衛星ですが、NICERとの同時観測で、X線観測と相補的に恒星フレアの時空間発展を捉えることができました。惑星の研究者として思いもしない成果に驚いています。『ひさき』の後継機である『LAPYUTA』衛星でもこのようなシナジーを目指していきたいです。」(木村智樹)

研究者情報
研究者名
Shun Inoue
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.3847/1538-4357/ae2be0

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/300563

【書誌情報】
Shun Inoue, Wataru Buz Iwakiri, Tomoki Kimura, Teruaki Enoto, Yuta Notsu, Hiroyuki Uchida, Kenji Hamaguchi, Shin Toriumi, Atsushi Yamazaki, Fuminori Tsuchiya, Go Murakami, Kazuo Yoshioka, Zaven Arzoumanian, Keith Gendreau (2026). Origin of the Stellar Fe Kα Line Clarified with Far-ultraviolet and X-Ray Observations of a Superflare on the RS Canum Venaticorum–type Star UX Arietis. The Astrophysical Journal, 1002, 1, 65.