キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、再発・難治性B細胞リンパ腫に対して高い有効性を示す一方で、免疫が関与する合併症が多くみられ、その対策が重要です。なかでも、サイトカイン放出症候群(CRS)は、CAR-T細胞、あるいは活性化された他の免疫細胞が放出するサイトカインに起因し、輸注後数時間から数日以内に発生する急性期合併症です。CRSは重症化すると生命に関わることに加え、遷延性血球減少など他の合併症の誘因となることが報告されてきました(Transplantation and Cellular Therapy, 30, 4, 404-414)。重症CRSの治療は改善してきましたが、重症化を予測することは困難でした。
そこで、新井康之 医学部附属病院講師、城友泰 同助教、加藤光次 九州大学准教授、熱田由子 日本造血細胞移植データセンター長(兼:愛知医科大学教授)らの研究グループは、日本全国で実施されたCAR-T細胞療法のレジストリに登録された900人のデータを用いて、重症CRSのリスクをCAR-T輸注前に予測する因子を抽出しました。その結果、CAR-T細胞輸注前の腎機能低下が重症CRSリスク因子であることが分かりました。また腎機能低下と、炎症マーカー上昇を組み合わせることによって高い精度で重症CRS発症を予測できることを示しました。本研究成果により、CRS重症化リスクが高い患者群を事前に同定して、モニタリング強化と早期介入することにつながり、CAR-T細胞療法の安全性向上に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2026年4月15日に、国際学術誌「British Journal of Haematology」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「本研究では、腎機能をはじめとする一般的な血液検査項目を組み合わせることで、CAR-T輸注前の時点でCRS重症化リスクを層別化できる可能性を示しました。特に腎機能は、これまでCRSへの影響について十分に注目されてこなかった因子であり、CRSの病態理解にも新たな視点を提供する結果と考えています。CRS重症化のリスクが高い患者さんを早期に把握し、より安全で個別化されたCAR-T細胞療法の実現につながる、細胞療法運用学における基盤的なエビデンスとなることが期待されます。」(城友泰、新井康之)