2024年4月に日本で医師の時間外労働の上限規制(働き方改革)が導入され、救急医療への影響が懸念されていました。特に心筋梗塞などの緊急疾患では、24時間体制での迅速な治療が必要であり、医師の勤務時間制限が治療の遅れや死亡率の上昇につながる可能性が指摘されていました。
今中雄一 医学研究科教授、髙田大輔 同特定講師(現:同志社女子大学准教授)、森下哲司 同客員研究員(兼:松波総合病院副部長)らの研究グループは、全国163施設・約33万件の心血管治療手技(カテーテル治療およびバイパス手術)のデータを用いて、政策導入前後の変化を準自然実験デザイン(分割時系列解析)で検証しました。その結果、働き方改革導入後も、緊急カテーテル治療やバイパス手術の実施件数、院内死亡率ともに有意な変化は認められませんでした。
本研究は、医師の働き方改革が少なくとも初期段階においては循環器救急医療の提供体制や患者予後に悪影響を及ぼさなかったことを示すものであり、医療政策の安全性評価に重要な知見を提供します。
本研究成果は、2026年4月12日に、国際学術誌「Cardiovascular Intervention and Therapeutics」に掲載されました。
補足情報用 見出し
「医師の働き方改革は医療崩壊を招くのではないかという懸念がありました。本研究では、全国規模のデータを用いてその影響を検証し、少なくとも働き方改革導入後の1年間では循環器救急医療の質は維持されていることを示すことができました。今後は長期的な影響や他診療領域への影響についても検証していきたいと考えています。」(森下哲司)
【DOI】
https://doi.org/10.1007/s12928-026-01283-1
【書誌情報】
Tetsuji Morishita, Daisuke Takada, Hisashi Itoshima, Maki Mima, Susumu Kunisawa, Yuichi Imanaka (2026). Early impact of Japan's 2024 physician work hour reform on cardiovascular revascularization: a multi-center interrupted time series analysis using a National-Level DPC database. Cardiovascular Intervention and Therapeutics.