永井悠太郎 理学研究科博士後期課程学生、榎戸輝揚 同准教授、辻本匡弘 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所(ISAS)准教授、山口弘悦 同教授らXRISMコラボレーションの Cen X-3解析チーム、Xiao-Min Tong 筑波大学准教授ほかの研究チームは、X線分光撮像衛星XRISMを用いた降着型パルサー「ケンタウルス座X-3」の観測データから、従来、中性の鉄原子起源と考えられていた約6.4 keVのFe Kα輝線が、実際には電子が5個程度失われた「低電離状態」の鉄イオンに由来することを初めて明らかにしました。このような低電離状態の鉄は、地上実験では安定して生成・保持することが困難です。本研究では、マクロで極限的な天体現象を宇宙の実験場として活用し、原子内の電子状態のミクロな物理過程の違いを診断する新手法を提示しました。これは、XRISMがエクストラサクセスのひとつに掲げた「新しいプラズマ物理学の研究に資する観測データの取得」に沿った成果となります。
本研究成果は、2026年4月8日に、国際学術誌「Publications of the Astronomical Society of Japan」に掲載されました。
研究者のコメント
「X線のような高エネルギー放射をする天体である降着型パルサーが引き起こす大規模でダイナミックな天体現象から、原子レベルのミクロな物理過程を垣間見ることができるというのは驚くべきことです。今後は、そこで得られた原子物理の情報を手がかりとして、逆に大規模な天体現象の物理機構に迫っていくことが期待されます。」(永井悠太郎)
「世界中のX線天文学の先輩方が、長年にわたって開発を続けてこられた検出器とX線天文台を最大限に活用して、これからも新しい宇宙像を開拓できるように頑張ります。」(榎戸輝揚)