上田佳宏 理学研究科教授、植松亮祐 博士(元・理学研究科博士後期課程学生)、小川翔司 東京理科大学助教、福島光太郎 同助教らを中心とする研究グループは、最新のX線天文衛星「XRISM」を用い、地球から約1,300万光年離れた「コンパス座銀河」の中心にある超大質量ブラックホール周辺の元素組成を精密に測定しました。 銀河の中心は、星の誕生や死、そして物質がブラックホールへ吸い込まれる過程を知る上で重要な場所ですが、これまでは観測の精度が足りず、詳しい成分分析が困難でした。XRISMの優れた分光能力により、ブラックホールを取り囲むガスと塵の層(トーラス)から放射される「蛍光X線」を詳細に捉えることに成功しました。分析の結果、鉄に対するアルゴンやカルシウムの割合が太陽系よりも低く、逆にニッケルの割合が高いという独特なパターンが判明しました。 この比率は、太陽の20倍以上の重さを持つ星の大半が、超新星爆発を起こさずにブラックホールに崩壊すると考えると整合します。
本研究成果は、2026年3月31日に、国際学術誌「Nature Astronomy」にオンライン掲載されました。
背景の写真:ハッブル宇宙望遠鏡で捉えたコンパス座銀河全体の可視光画像。(クレジット:NASA、 ESA)
研究者のコメント
「今回、取得したコンパス座銀河のX線スペクトルは、ASTRO-E計画(2000年打ち上げ失敗)から始まって26年間、待ち続けたX線マイクロカロリメータのデータで、溜息の出る美しさです。銀河中心の『超大質量ブラックホール』を研究するために得たデータが、その種である『恒星質量ブラックホール』の成因を解き明かすことになったことは全く予想外の展開であり、研究の面白さを物語っています。」(上田佳宏)
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41550-026-02817-6
【書誌情報】
The XRISM Collaboration (2026). Accurate determination of chemical abundances near a supermassive black hole. Nature Astronomy