協同繁殖とは、親以外の個体も子育てに参加し、グループで生活する社会システムのことです。協同繁殖は鳥類や哺乳類でよく研究されていますが、魚類での種間比較研究は限られており、どのような条件で進化するのかはよく分かっていませんでした。
佐藤駿 白眉センター/理学研究科特定助教と奥野聖也 大阪公立大学助教を中心とした研究チームは、アフリカの古代湖であるタンガニイカ湖に生息するランプロログス族シクリッド73種を対象に、最新の系統樹と野外・文献データを用いた系統種間比較解析を行いました。その結果、協同繁殖は単一の祖先から一度だけ生じたのではなく、複数回(少なくとも7回)独立に進化していたことが明らかになりました。さらに、協同繁殖種は非協同繁殖種に比べて、体が小さく、産卵数が少ない傾向が示されました。これらの結果は、小型で捕食されやすい種ほど、グループを作り、個体同士が協力して巣や縄張りを維持し、子を守る仕組み(協同繁殖)を進化させやすいこと、そしてその後の生活史進化として少産化が生じた可能性を示しています。
本研究成果は、2026年3月10日に、国際学術誌「Communications Biology」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「本当に苦労の多かった研究で、構想とデータ収集を始めてから、こうして論文として発表できるまでに10年近くかかりました。地道な野外調査とサンプリングを重ね、停電で明かりもない中、懐中電灯を口にくわえて卵の数を数えた日々は、今でも忘れられません。また、この研究は多くの方々と、長年の自然史的知見の蓄積に支えられて実現したものでもあります。どれほど興味深い現象を見つけても、その種が記載され、どこに生息し、どのような生態をもつのかが分からなければ、研究として十分に位置づけることはできません。京都大学で結成されたタンガニイカ湖日本人調査隊は、60年以上にわたり、固有魚類の多様性・生態・行動に関する研究を続けてきました。こうした先人たちの長年にわたる地道な知見の蓄積の上に、グループで繁殖する魚類という非常にユニークな進化をめぐる研究を今回ひとつの論文としてまとめることができました。」(佐藤駿)