チンパンジーが声の感情を道具音で表現―音楽・楽器演奏による発声表現外在化の起源―

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 音楽の起源には、感情を伝える声が楽器演奏へと発展したという説があります。

 服部裕子 ヒト行動進化研究センター助教らの研究グループは、飼育下のチンパンジー・アユム(オス、26才)が、自ら通路の床板を剥がして道具を作り、それを使って複雑で構造的な音を出すことで発声表現に類似した音生成を自発的に行うことを発見しました。この行動は、ドラミング、床板の引きずり、投げるといった複数の動作が組み合わさっており、その構成はチンパンジーの代表的な発声ディスプレイである「パント・フート」の構造と類似していました。

 また、この行動中に「プレイ・フェイス(遊ぶときに見られる表情)」などのポジティブな感情を示す表情が見られたことから、道具を通じた音表現として外在化される過程で、ディスプレイを超えた快感情を伴う表現へと発展している可能性も示唆されました。ただし本研究は単一個体の観察に基づくため、同様の傾向がチンパンジー一般に当てはまるかどうかは、今後さらなる検証が必要です。本研究は、ヒトの音楽性の進化的起源や、道具の使用が音響表現に与えた影響を探る上で重要な知見を提供すると考えられます。

 本研究成果は、2026年3月25日に、国際学術誌「Annals of the New York Academy of Sciences」にオンライン掲載されました。

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撮影:服部裕子、©京都大学 ヒト行動進化研究センター
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