自己免疫性関節炎における炎症性T細胞の病原性機能獲得メカニズムを解明

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 炎症性T細胞は、関節炎の慢性化に重要な役割を果たします。しかし、炎症関節におけるT細胞の機能的多様性や病原性を獲得する仕組みは十分に解明されていませんでした。

 竹内悠介 医生物学研究所特定研究員、渡邊仁美 同助教、近藤玄 同教授、廣田圭司 同准教授らの研究グループは、T細胞依存的に慢性的な関節炎を発症する疾患モデルマウスを用い、シングルセルRNAおよびT細胞受容体(TCR)シーケンス解析により、関節に浸潤する炎症性T細胞の分化過程と炎症を悪化させる機能について包括的に検討しました。その結果、関節に浸潤するT細胞が幹細胞様状態から病原性状態へと段階的に分化するために必要な転写因子を同定し、関節内での細胞分化が関節炎の増悪化に関わることを明らかにしました。

 さらに、病原性T細胞への分化は炎症環境によって一律に誘導されるのではなく、炎症関節内の自分のタンパク質に強く反応するTCR刺激を必要とする選択的な過程であることを示しました。本成果は、炎症組織におけるTCRシグナル強度が、T細胞の機能的分化および病原性獲得を規定する重要な要因であることを示す新たな知見です。自己免疫疾患におけるT細胞の分化制御機構の理解を深めるとともに、それらを標的とした新規治療標的創出の基盤となることが期待されます。

 本研究成果は、2026年3月23日に、国際学術誌「Nature Immunology」にオンライン掲載されました。

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研究者のコメント

「自己免疫疾患の病態を自分のタンパク質に反応するT細胞の視点から読み解くことをテーマに、これまで研究に取り組んできました。本研究により、関節炎の発症や慢性化において、これまで十分に意識されてこなかった『炎症局所での自分のタンパク質に対するTCR刺激』が、T細胞の病原性獲得に中心的な役割を果たしていることを明らかにすることができました。関節炎の病態理解を一段と深める意義深い研究成果を得ることができたことを嬉しく思っています。今後は、TCR刺激でおこる細胞内の反応に着目した解析をさらに深めることで、関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患の病態解明に一層の貢献できるよう、引き続き研究に取り組んでいきたいと考えています。」(竹内悠介)

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