山野隆志 生命科学研究科准教授、嶋村大亮 理化学研究所特別研究員(元・生命科学研究科研究員)、安田詢子 生命科学研究科修士課程学生(研究当時)、山原洋佑 同修士課程学生(研究当時)、中野博文 同修士課程学生(研究当時)、福澤秀哉 京都女子大学教授(元・生命科学研究科 教授)らの研究グループは、光合成におけるCO2濃縮メカニズム(光合成のターボエンジン:水中の乏しいCO2を葉緑体内に濃縮し、光合成をフル回転させる仕組み)を、不要な時に抑制する「ブレーキ役」のタンパク質「CBP1」を発見しました。
これまで、CO2が少ない環境でターボエンジンを始動させる「アクセル」の仕組みは知られていましたが、工場排ガスのような高CO2環境(ターボが不要な環境)で、いかにしてエンジンをスローダウンさせエネルギーを節約しているかは謎に包まれていました。本研究により、藻類が環境に応じてアクセルとブレーキを使い分ける精巧な省エネ生存戦略が明らかになりました。この成果は、高濃度CO2を利用した藻類バイオ燃料生産やカーボンリサイクル技術において、エネルギー効率を最大化する藻類の育種に応用できると期待されます。
本研究成果は、2026年2月4日に、国際学術誌「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「CBP1との出会いは、今から18年以上前、2007年の夏に遡ります。当時大学院生だった山原君が見つけ出したこのタンパク質は、当初全く機能が分からず、解析のための変異株も作れないまま、研究の中断を余儀なくされることもありました。風向きが変わったのは、近年の『ゲノム編集技術』の登場です。これにより変異株の作成が容易になり、さらに当時大学院生の安田さんが『高CO2条件でこそ異常が出る』という、私たちの予想とは全く逆の現象を発見してくれました。この意外な発見がブレイクスルーとなり、長く停滞していた謎が一気に解明されました。多くの学生たちの粘り強い努力と、技術の進歩が結びつき、足掛け19年を経てようやく実を結んだ、私たちにとって非常に思い入れの深い研究成果です。」
【DOI】
https://doi.org/10.1073/pnas.2518136123
【書誌情報】
Daisuke Shimamura, Junko Yasuda, Yosuke Yamahara, Hirofumi Nakano, Shin-Ichiro Ozawa, Ryutaro Tokutsu, Ayumi Yamagami, Tomonao Matsushita, Yuichiro Takahashi, Takeshi Nakano, Hideya Fukuzawa, Takashi Yamano (2026). A nuclear CobW/WW-domain factor represses the CO₂-concentrating mechanism in the green alga Chlamydomonas reinhardtii. Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS), 123, 6, e2518136123.