賀茂川のオオサンショウウオ、交雑化進む―在来種は絶滅寸前、統計モデルで判明―

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 西川完途 地球環境学堂教授(兼:人間・環境学研究科教授)、土田華鈴 同特定助教、高倉耕一 滋賀県立大学教授らの研究グループは、京都市の賀茂川において、外来種との交雑が問題となっているオオサンショウウオ類の個体群動態を推定しました。

 国の特別天然記念物である在来種オオサンショウウオは、外来種チュウゴクオオサンショウウオとの交雑により、遺伝的独自性を失う危機に瀕しています。賀茂川流域は交雑が初めて報告された地域であり、京都市などによる調査が行われてきました。 

 本研究グループは、2005年から2021年にかけての134回の長期調査データを基に、状態空間モデルという統計モデルを構築し、ベイズ法を用いて解析しました。その結果、調査開始時の2005年頃には、日本産個体と中国産個体の配偶で生まれた第1世代目である雑種「雑種第1代」が最多でしたが、2021年時点では在来種は推定4.5個体、純粋な外来種も推定31個体と激減していることが判明しました。代わりに、雑種第2代以降の交雑個体が推定2800個体以上に増加し、現在の賀茂川の個体群のほぼ全てを占めていることが明らかになりました。 

 調査1回あたりの個体の発見率は0.1%未満と極めて低く、現在の調査手法のままでは定着後の交雑個体の防除は困難であることも示されました。今後は、より効率的な防除手法の開発や、対象地域を絞った対策が急務であることが示唆されます。

 本研究成果は、2025年11月17日に、国際学術誌「保全生態学研究(Japanese Journal of Conservation Ecology)」にオンライン掲載されました。

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賀茂川におけるオオサンショウウオ類の種構成変化(2005年 vs 2021年):2005年頃は雑種第1代(F1)が主流だったが、2021年頃には第2代以降(F2以降)の雑種に置き換わり、在来種はほぼ見られなくなった。

研究者のコメント

「生き物を本来の生息地ではない場所に逃した(または逃げ出した)場合、本研究のように絶滅危惧種や、日本の国宝とも言える特別天然記念物に大きな悪影響を与えることがあります。本研究の成果が、今後、似たような問題を生じさせない抑止力になれば幸いです。」(西川完途)

「オオサンショウウオ類の保全や外来種・交雑種の防除に限らず、公的な資源を投入して行う事業では、実現可能性や完了時期を見積もって立案し、実施途中でもその効果を定量的に評価しながら進めることが必要です。もともと個体数推定を目的として収集されたデータではなくても、適切な仮定や手法を用いることで、ある程度の推定が可能であることが本研究から示されました。このような定量的な評価が他の生物や他の保全・防除事業でも広く行われることが望ましいと考えています。」(高倉耕一)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.18960/hozen.2504

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/298888

【書誌情報】
高倉 耕一, 土田 華鈴, 松井 正文, 富永 篤, 吉川 夏彦, 江頭 幸士郎, 福谷 和美, 福山 伊吹, 山本 和宏, 松原 康平, 大沼 弘一, 原 壮大朗, 西川 完途 (2025). 賀茂川におけるオオサンショウウオ類の個体群サイズ推定. 保全生態学研究, 30, 2, 139-148.

メディア掲載情報

京都新聞(2026年1月14日 20面)、読売新聞(2026年2月28日 8面)に掲載されました。