LEE Shiu-Hang 理学研究科准教授(兼:東京大学客員科学研究員)、澤田涼 東京大学特任研究員(研究当時:同日本学術振興会特別研究員)、黒川宏之 同准教授、諏訪雄大 同准教授、瀧哲朗 同特任研究員、谷川衝 福井県立大学准教授らによる研究グループは、地球のような岩石惑星の誕生に不可欠な短寿命放射性核種(10Be、26Al、36Cl、41Ca、53Mn、60Fe)が、どのようにして初期の太陽系にもたらされたかという天文学の長年の謎を解決する新しい理論「宇宙線浴(Immersion)」メカニズムを提案しました。
本研究が提案する新しいメカニズムは、太陽系近傍で起きた超新星爆発の物質が太陽系円盤に「注入」されるとともに、爆発の衝撃波に閉じ込められた高エネルギー宇宙線に円盤全体が包み込まれて、円盤内で短寿命放射性核種が「合成」されるというものです。
この理論モデルに基づくと、太陽系を破壊しない安全な距離(約1パーセク、約3.3光年)で起きた超新星爆発によって、隕石分析から推定される短寿命放射性核種の存在量を一貫して説明できることが示されました。これは、従来のどのモデルも説明できなかった問題を解き明かす成果であり、太陽系の起源、ひいては地球型惑星の普遍性に迫る重要な知見です。
本研究成果は、2025年12月10日に、国際学術誌「Science Advances」に掲載されました。
「研究者の人生において、ひらめきは予期せぬ場所からもたらされることがあります。特に、今回のような学際的な研究においては、自分の専門分野では自明な知識が、他の分野の同僚にとっては欠けていたパズルピースのように役立つことが多々あります。超新星残骸の進化論や宇宙線加速理論は、一見、地球や地球型惑星の誕生とは直接関係のない知見に見えるかもしれません。しかし、今回の研究では、その形成過程を解き明かす鍵となる、短寿命放射性核種(SLR)の起源について、理解を深める重要なインサイトをもたらしました。この経験を通じて、異なる分野の仲間との日々の何気ない議論がいかに大切であるかを痛感しました。」(LEE Shiu-Hang)
Ryo Sawada, Hiroyuki Kurokawa, Yudai Suwa, Tetsuo Taki, Shiu-Hang Lee, Ataru Tanikawa (2025). Cosmic-ray bath in a past supernova gives birth to Earth-like planets. Science Advances, 11, 50, eadx7892.