巨大な星の活動で作られた生命必須元素―超新星残骸観測で掴んだ塩素・カリウムの大量生成の証拠―

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※「詳しい研究内容について」(PDF)を一部修正しました。(2025年12月11日)

 元素は宇宙の恒星や超新星爆発などで起こる核反応で作られてきましたが、起源がよくわかっていない元素も多くあります。たとえば私たち生命に必要な塩素やカリウムは、理論予測より一桁多く宇宙に存在することが知られており、どのように宇宙に供給されてきたかわかっていませんでした。

 松永海 理学研究科博士課程学生(兼:同日本学術振興会特別研究員)、内田裕之 同助教、佐藤寿紀 明治大学専任講師の国際共同研究グループは、超新星爆発の残骸である「カシオペア座A」から来るX線を、XRISM衛星の精密X線分光観測によって詳細に調べました。その結果、この天体の起源となった太陽の10倍以上の質量を持つ巨大な星の内部で、塩素やカリウムが大量に合成されていたことが初めて明らかになりました。さらにこの大量生成は、爆発前の恒星内部が対流の作用によって激しく掻き乱されていたことで説明できることも明らかにしました。

 本研究成果は、2025年12月4日に、国際学術誌「Nature Astronomy」にオンライン掲載されました。

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XRISM 衛星による超新星残骸「カシオペア座A」の観測。画像はXRISM/Xtend によって得られたX線画像(青色)とジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡によって得られた画像(赤・緑色)を混合したもの。黄色のX線スペクトルが XRISM/Resolve の観測結果。©明治大学/京都大学/JAXA

研究者のコメント

「地球や生命がどのように誕生したのかは、誰もが一度は思いを巡らせる永遠の問いです。今回の研究はその壮大なストーリーのほんの一端を明らかにしたにすぎませんが、そこに携われたことを光栄に思います。」(松永海)

「希少元素の検出はX線天文学における長年の夢でした。その夢が、私たちの開発した衛星で実現しただけでなく、得られた結果が予想を超えるものであったことに、自然科学の深奥に触れる思いです。『爆発する星の中で何が起きているのか?』という一見すると不可知の問いに、わずかながらも迫ることができたことをうれしく思います。」(内田裕之)

「初めてリゾルブのデータを見たときの驚きと興奮は、今でも鮮明に覚えています。打ち上げ前には見えるとは思っていなかった元素が、はっきりと確認できました。自分たちが開発した衛星によって、期待を超える大きな発見ができたことは、研究者としてこれ以上ない喜びです。」(佐藤寿紀)

研究者情報
研究者名
Kai Matsunaga
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41550-025-02714-4

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/299065

【書誌情報】
XRISM collaboration (2025). Chlorine and potassium enrichment in the Cassiopeia A supernova remnant. Nature Astronomy.