近年の生命科学の進展により、生体分子の相互作用や化学反応ネットワークの構造が詳細に明らかになりつつあります。こうしたネットワークは、細胞の状態制御や分化、多様性の形成に深く関わっており、特に外的な変化に応じた細胞状態の急激な切り替わりは、「分岐現象」として数理的に捉えることができます。しかし、生体内ネットワークは複雑かつ不確実性を多く含むため、従来の手法では分岐の要因や影響を体系的に解析するのは困難でした。
Yong-Jin Huang 医生物学研究所博士課程学生、岡田崇 同准教授、望月敦史 同教授の研究グループは、化学反応ネットワークのネットワーク構造情報のみに基づいて分岐現象を解析する手法(構造分岐解析)を開発しました。特に、分岐を引き起こす因子や分岐挙動を示す分子をネットワーク構造の情報から決定できることを証明しました。この理論をマクロファージのM1/M2型分化に応用することで、ネットワーク構造が分化パターンを強く制約していること、および特定の遺伝子の欠失により中間的な分化状態を実現できることを予測しました。今後、こうした構造理論に基づく予測を実験と組み合わせることで、生命システムの原理解明に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2025年7月29日に、国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41598-025-10688-6
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/296792
【書誌情報】
Yong-Jin Huang, Takashi Okada, Atsushi Mochizuki (2025). Uncovering bifurcation behaviors of biochemical reaction systems from network topology. Scientific Reports, 15, 27596.