難病「アミロイドーシス」に“光”を。―アミロイドの無毒化による治療効果を初めて実証―

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 梶弘典 化学研究所教授は、金井求 東京大学教授と山根三奈 同特任助教らの研究グループ、富田泰輔 同教授、堀由起子 同准教授、山中邦俊 熊本大学准教授、広川貴次 筑波大学教授、相馬洋平 和歌山県立医科大学教授、安東由喜雄 杉村会杉村病院総長、植田光晴 熊本大学教授、水口峰之 富山大学教授の研究グループと共同で、難病「トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)」に対し、新たな治療戦略を打ち出しました。

 本技術の鍵となった触媒は、光と空気中の酸素を使った化学反応(光酸素化)により、疾患モデル動物個体内で毒性のアミロイドを無毒化することができ、治療効果を観察することに初めて成功しました。

 従来の治療法は、早期患者の症状を和らげ進行を遅らせる、または健常者の発病予防に対してある程度の効果が見込めていました。しかしながら、ある一定のステージまで病気が進行した患者に対しては、体内に蓄積したアミロイドを無毒化・分解する効能はありませんでした。一方、本研究の特色である「アミロイド選択的な光酸素化」は、アミロイドの形成阻害に加え、不可逆的に沈着したアミロイドを化学反応により選択的に無毒化することで、動物個体で病態改善を実現可能とする小分子触媒の世界初の例となります。本研究は、課題としていた治療効果の概念実証獲得を克服し、触媒的光酸素化法を臨床適用に繋げるマイルストーンを達成したと共に、これまで治療法が無かった患者にも有効な特効薬の開発につながることが期待されます。

 本研究成果は、2025年7月29日に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載されました。

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光と小さな触媒分子により、世界で初めて動物個体内でアミロイドを無毒化し、病態改善を実現
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1021/jacs.5c06205

【書誌情報】
Mina Yamane, Hiroki Umeda, Moe Toyobe, Atsushi Iwai, Kuraudo Ishihara, Genki Kudo, Harunobu Mitsunuma, Yukiko Hori, Taisuke Tomita, Mineyuki Mizuguchi, Masamitsu Okada, Mitsuharu Ueda, Yukio Ando, Shigehiro A. Kawashima, Youhei Sohma, Hironori Kaji, Takatsugu Hirokawa, Kunitoshi Yamanaka, Motomu Kanai (2025). Catalytic Photooxygenation Demonstrates Therapeutic Efficacy in Transthyretin Amyloidosis. Journal of the American Chemical Society.

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