CAR-T細胞の「攻撃力」を予測―CAR-T製造中の細胞増殖が治療効果と相関する―

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 再発・難治性B細胞リンパ腫に対する治療の切り札としてキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法が期待されていますが、CAR-T細胞療法の治療効果は症例ごとに大きく異なります。治療効果はリンパ腫細胞の性質(防御力)にも依存しますが、CAR-T細胞は患者さん自身から採取したT細胞を原料として製造されることから、症例ごとに原料T細胞の機能に差があり、できあがったCAR-T細胞自体の抗腫瘍効果(攻撃力)が異なることが知られるようになってきています。そのためCAR-T細胞の「攻撃力」を評価するバイオマーカー同定が喫緊の課題です。

 城友泰 医学部附属病院助教、新井康之 同講師、長尾美紀 同教授、北脇年雄 同助教、山下浩平 同准教授、髙折晃史 同教授らの研究グループは、CD19標的CAR-T細胞療法を実施したB細胞リンパ腫75症例について、患者さんから採取されたT細胞を用いてCAR-T細胞が製造される過程に着目して、製造中の細胞増殖の程度と治療効果の相関を評価しました。その結果、製造中の細胞増殖が良好だった症例は、その後の治療効果が良好であることが明らかになりました。このことにより、CAR-T細胞製造中のデータからCAR-T細胞の「攻撃力」を評価して、CAR-T投与前の早い段階で治療効果を予測できることが示唆されました。本結果は、CAR-T細胞療法の正確な治療効果の予測に基づいた個別化治療につながることが期待されます。

 本研究成果は、2025年7月9日に、国際学術誌「British Journal of Haematology」にオンライン掲載されました。

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研究者のコメント
「CAR-T細胞療法は画期的な治療ですが、奏効が得られない症例も多くみられます。しかし、治療効果を事前に予測することが困難でした。今回、製造中のデータによって、CAR-T細胞の抗腫瘍活性を評価して、予後を正確に推定できる可能性が示唆されました。今後は、細胞増殖に影響する原料側の因子を同定して、より治療効果を高める戦略の開発を目指したいと思います」(城友泰、新井康之)
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1111/bjh.20266

【書誌情報】
Tomoyasu Jo, Yasuyuki Arai, Tomoshige Shimizu, Toshio Kitawaki, Takashi Sakamoto, Chisaki Mizumoto, Junya Kanda, Momoko Nishikori, Kohei Yamashita, Miki Nagao, Akifumi Takaori-Kondo (2025). Consistent ex vivo cell proliferation during manufacturing predicts favourable outcomes post-CAR-T-cell therapy. British Journal of Haematology.

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