干潟の地中から美しい希少魚を「発掘」~地中で子育てする奇妙な生態~

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 クダリボウズギスはテンジクダイ科の小型種で、半透明な体に赤い色素を持つ美しい魚です。世界的にも希少種とされ、どこにいるのかを含め生態や繁殖に関する詳細な情報はほとんどありませんでした。

 邉見由美 フィールド科学教育センター助教は、宮城県南三陸町と一般社団法人サスティナビリティセンターらとの共同研究で、2022年に、宮城県志津川湾の水戸辺川河口の干潟で、地中の深さ約40 cmにある空洞から多数のクダリボウズギスを採集し、うち4個体は口の中で卵を守る口内保育を行っていることを発見しました。この発見により、クダリボウズギスは干潟の地中の空洞を生活と繁殖に利用する特殊な生態を持ち、また、最も北方で繁殖するテンジクダイ科であることが判明しました。クダリボウズギスが出現した地中の空洞は甲殻類の巣穴である可能性が高いため、宿主となる甲殻類の特定やその関係性を明らかにするためのさらなる調査が期待されます。

 本研究成果は、2025年5月31日に、国際学術誌「Plankton & Benthos Research」にオンライン掲載されました。

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採集したクダリボウズギス 
研究者のコメント

「地中深くにこんなに美しい魚がひっそりと暮らしていたことに驚きました。志津川湾を含む東北太平洋岸では、東日本大震災とその後の再建により、沿岸の環境が大きく変わりました。クダリボウズギスが繁殖に使う潮間帯も例外ではなく、発見されぬまま消えた命があったのかもしれません。少しずつですが、本種の生態が明らかになってきましたので、今後の続報にもぜひご期待ください。」(邉見由美)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.3800/pbr.20.107

【書誌情報】
Shota Suzuki, Takuzo Abe, Yumi Henmi, Akihiro Dazai (2025). First report of a genus Gymnapogon utilizing subterranean chambers in the upper intertidal zone of an estuary for shelter and reproduction in Shizugawa Bay, Miyagi Prefecture, Japan. Plankton and Benthos Research, 20, 2, 107-113.