地震後の超高層大気変動を3次元解析で高精度に可視化―電波障害予測や宇宙天気予報の実現にも期待―

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 惣宇利卓弥 生存圏研究所⽇本学術振興会特定研究員は、Weizheng Fu 名古屋大学日本学術振興会外国人特別研究員、大塚雄一 同准教授、ノルウェー・オスロ大学(University of Oslo)、情報通信研究機構との共同研究で、日本国内に整備された超稠密なGNSS観測網を活用することで、令和6年能登半島地震発生直後の電離圏応答を高精度に解析し、時間的・空間的に展開する電離圏電子密度変動の3次元的な特徴を明らかにしました。

 本研究では、本研究グループが開発した三次元電離圏トモグラフィー手法を用いて、従来の2次元観測では見えなかった地震後の電離圏電子密度変動の立体構造や成長過程を明らかにしました。地震発生の約10分後から震央を中心として同心円状に広がる電子密度変動が水平方向および鉛直方向に広がる様子を明瞭に捉えました。特に、震央の南側では、高い高度ほど電子密度の変動が早く伝搬し、電子密度変動の波面の方向が時間とともに鉛直に近づく様子が捉えられました。モデル計算の結果、これらの変動は地震によって生じた音波によるものであり、高度が高くなるほど音速が大きくなるのが原因であることを確認しました。また、理論と観測の違いからは、電離圏内での音波の非線形な伝播や、断層沿いに複数の音波源が存在する可能性が示唆されます。本成果は、地球と宇宙環境のつながりに関する理解を深め、将来的にはGPSを使った測位の精度向上や、人類の生存環境に関わる宇宙環境予測への貢献が期待されます。

 本研究成果は、2025年5月29日に、国際学術誌「Earth, Planets and Space」にオンライン掲載されました。

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(a) (b):GEONETとソフトバンク社が提供するGNSS受信機の分布。(c)~(l):令和6年能登半島地震の直後TEC の変動成分の2次元マップ図。縦軸と横軸はそれぞれ、地理緯度と経度を表す。黒の点線で囲まれた部分は、3次元トモグラフィーの解析領域を示している。五角星は震央を示している。
研究者情報
書誌情報
【書誌情報】
Weizheng Fu, Yuichi Otsuka, Nicholas Ssessanga, Atsuki Shinbori, Takuya Sori, Michi Nishioka, Septi Perwitasari (2025). Unveiling the vertical ionospheric responses following the 2024 Noto Peninsula Earthquake with an ultra-dense GNSS network. Earth, Planets and Space, 77, 77.
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