工藤洋 生態学研究センター教授と柴田あかり 同研究員(現:福井市自然史博物館学芸員)らの研究グループは、晴れた日には花が上を向き、雨の日には下を向く植物について、その意義とメカニズムを解明しました。
本研究で用いた植物、アブラナ科のハクサンハタザオは白い小さな花をたくさん咲かせ、晴れた日には花が一斉に太陽の方向を向く一方で、雨の日には花が下を向きます。植物がどのように、また何のために花の向きを変えるのかを明らかにするために、野外調査と操作実験、発現遺伝子の解析を行いました。晴天時に花が上を向くのは、花柄(花の下の茎)が青色光の方向に伸長するためであり、上を向くことで送粉昆虫による花粉の持ち出しが促進され結実も良くなりました。一方で雨天時に下を向くのは、低温や青色光が弱い条件で花柄が重力の方向に伸長するためであり、下を向くことで雨粒による花粉へのダメージを軽減していました。これらのことから、花の向きを天候に応じて変えることは植物の積極的な屈性応答であり、適応的な特性であるといえます。
本研究成果は、2025年5月3日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-025-59337-6
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/294031
【書誌情報】
Akari Shibata, Genki Yumoto, Hanako Shimizu, Mie N. Honjo, Hiroshi Kudoh (2025). Flower movement induced by weather-dependent tropism satisfies attraction and protection. Nature Communications, 16, 4132.