フッ化物イオン電池向けイオン液体電解液の開発

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 若宮淳志 化学研究所教授、タン・テンセイ 同博士課程学生らの研究グループは、安部武志 工学研究科教授の研究グループとの共同研究成果として、フッ化物イオン電池(FIB)が室温で安定に充放電可能なイオン液体電解液を開発しました。新たに開発したイオン液体([MNPA][TFSI]および[NPPA][TFSI])は、四級アンモニウムフッ化物塩(Np2F)をよく溶かし(>0.7 M)、得られたイオン液体電解液は、従来の電解液よりも化学安定性が高く、室温で長時間(>100 h)安定にフッ素アニオンを電極間でシャトル輸送できることも確認しました。開発したイオン液体は、電解液の溶媒として、これまでFIB用として一般的に用いられてきたBTFE(3.5 V)に比べても2 V以上も広い5.8 Vもの電位窓をもち、Pbだけでなく、より酸化電位の高いAgを電極に用いたフッ化物イオン電池でも室温で動作することを実証しました。本研究成果は、フッ化物イオン電池電解液の設計に指針を与えるものであり、今後の性能向上に大きく貢献することが期待されます。

 本研究成果は、2025年4月7日に、国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」 にオンライン掲載されました。

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開発したフッ化物イオン電池用の安定なイオン液体電解液
研究者のコメント
「再生可能エネルギーを有効に利用するためには、太陽電池などの創エネ技術だけでなく、優れた畜エネ技術が必要不可欠です。本研究では、安部武志教授が牽引する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の『電気自動車用革新型蓄電池開発』プロジェクト(RISING3)に参画し、有機材料化学の視点から、反応性の高いフッ素アニオン用の優れた電解質が開発できないかと挑んだ研究成果です。担当してくれた学生(Tan君)は、材料の高純度化、超脱水にこだわり、開発に苦労しましたが、材料の物性の本質を引き出し、フッ化物イオン電池の材料としてのポテンシャルを見出すことができました。」(若宮淳志)
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1002/anie.202422299

【書誌情報】
Tiancheng Tan, Richard Murdey, Shunsuke Sumitomo, Kazuyuki Sato, Takeshi Abe, Atsushi Wakamiya (2025). Tailored 3-Alkoxy-N,N,N,2,2-Pentamethylpropan-1-Ammonium Bis(trifluoromethylsulfonyl)Imide Ionic Liquids for Room-Temperature Fluoride-Ion Batteries. Angewandte Chemie International Edition, e202422299.

メディア掲載情報

日刊工業新聞(4月24日 28面)に掲載されました。