井上浩輔 白眉センター/医学研究科准教授と古村俊昌 米国ハーバード大学(Harvard University)博士課程学生らの研究グループは、機械学習を用いた効果の異質性分析における、科学コミュニケーションのための実践的枠組みを提案しました。
因果関係を探る機械学習アルゴリズムを用いた効果の異質性分析が近年注目を集めています。しかし、これらの手法から得られるデータドリブンな知見は、人間が解釈し意思決定を行う上でのニーズと齟齬が生まれる可能性があることから、応用には注意が必要です。今回の研究では機械学習が提示するデータドリブンな知見と現実的な意思決定と統合する実践的なフレームワークが提案されました。
提案された枠組みは、機械学習を用いた効果の異質性の推定、解釈のためのサブグループ検出のために異なるデータを入力し、人間の意思決定のプロセスに近い決定木を用いて効果の異質性が特に大きい集団を特定します。また、一連の解析における解釈性を批判するための指標も提案しています。これらを組み合わせることで、機械学習が示しているパターンと現実的な意思決定で必要とされているパターンを批判的に吟味することができ、より解釈性・答責性が高い解析が可能となります。これは、効果の異質性を調査する疫学研究において、効果的な機械学習の活用と科学的コミュニケーションの両方を確保するための一般的な戦略となり得る可能性があります。
本研究成果は、2025年3月4日に、国際学術誌「European Journal of Epidemiology」にオンライン掲載されました。

【DOI】
https://doi.org/10.1007/s10654-025-01215-y
【書誌情報】
Toshiaki Komura, Falco J. Bargagli-Stoffi, Koichiro Shiba & Kosuke Inoue (2025). Two-step pragmatic subgroup discovery for heterogeneous treatment effects analyses: perspectives toward enhanced interpretability. European Journal of Epidemiology.