ブラシノステロイド(BR)は、植物の葉・茎・根の器官伸長など、植物形態形成を促進的に調節する植物ステロイドホルモンです。BRは受容体やその下流の転写因子は知られていましたが、BRによる植物成長の制御機構においては未だ知られていない因子の存在が予測され、その分子実態が探されていました。
山上あゆみ 生命科学研究科助教、中野雄司 同教授、宮川拓也 同准教授、仲村友介修士課程学生(研究当時)、西田快世 同博士課程学生、宮地朋子 理化学研究所研修生(兼:東京大学博士課程学生)(研究当時)、浅見忠男 東京大学教授らの共同研究グループは、植物成長の特に草丈を野生型の約150%に増大させる新規因子BIL7を、BR生合成阻害剤Brzを用いたケミカルバイオロジー研究によって発見しました。BIL7は、通常は細胞膜に局在しながら、BRシグナル伝達の活性化により核に移行し、その際にBRシグナル伝達のマスター転写因子BIL1/BZR1 と結合して、その核移行およびタンパク質の安定化を促進化する機能を持ち、そのダイナミックな分子機能によって植物草丈を大きく増大させる能力を持つ新規な因子であることが明らかとなりました。
本研究によるBIL7の発見は、植物成長促進における分子機構の解明、その機能を活用した植物バイオマスや穀物生産が増大化した新植物の創製を目指す新技術開発などに繋がると期待されます。
本研究成果は、2024年12月20日に、国際学術誌「The Plant Journal」にオンライン掲載されました。

【DOI】
https://doi.org/10.1111/tpj.17212
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/291555
【書誌情報】
Tomoko Miyaji, Ayumi Yamagami, Yusuke Nakamura, Kaisei Nishida, Ryo Tachibana, Surina Surina, Shozo Fujioka, Mariano Garcia-Hourque, Santiago Mora-García, Shohei Nosaki, Takuya Miyakawa, Masaru Tanokura, Minami Matsui, Hiroyuki Osada, Kazuo Shinozaki, Tadao Asami, Takeshi Nakano (2024). BIL7 enhances plant growth by regulating the transcription factor BIL1/BZR1 during brassinosteroid signaling. The Plant Journal, 121, 2 , e17212.