酸化物における水素吸蔵メカニズムを解明―水素を含んだセラミクスの開発における新展開―

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 菅大介 化学研究所准教授、磯田洋介 同博士課程学生、島川祐一 同教授と中溝珠里 工学研究科修士課程学生、間嶋拓也 同准教授の研究グループは、Thanh Ngoc Pham 大阪大学助教、森川良忠 同教授、麻生亮太郎 九州大学准教授、細川三郎 京都工芸繊維大学教授、新田清文 高輝度光科学研究センター研究員と共同で、結晶格子中の酸素空孔の規則配列が、酸化物中への水素吸蔵を促進していることを明らかにしました。また、この指針を基に、水素脱挿入によって電気抵抗が三桁にも渡って可逆的に変調可能な物質を同定することにも成功しました。

 クリーンな元素である水素を軸とした水素社会実現のためには、水素を含んだセラミクス材料の開発そして学術的理解が不可欠です。現在広く機能性セラミクス材料として使われている酸化物においても、水素を吸蔵可能な物質は知られていましたが、そのメカニズムはよくわかっていませんでした。

 本研究グループでは、酸化物結晶格子中の酸素空孔の規則配列に着目しました。エピタキシャル成長技術を活用して、酸素空孔がランダム配列および規則配列したストロンチウム鉄コバルト酸化物Sr(Fe,Co)Oy薄膜を作製し、電気化学的に吸蔵可能な水素量を調べました。その結果、酸素空孔が規則配列した薄膜の方が、ランダム配列した薄膜よりも、水素吸蔵量が多くなることが明らかになりました。さらに、酸素空孔が規則配列したSrFe0.5Co0.5O2.5においては、水素脱挿入によって、電気抵抗が三桁にもわたって変調できることも見出しました。これらの結果は、酸素空孔の規則化が酸化物への水素吸蔵を促進する要因であることを示すものであり、今後の水素を含んだ酸化物の設計に指針を与え、その研究開発を加速すると期待できます。

 本研究成果は、2025年1月2日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

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研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-024-55517-y

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/291598
 
【書誌情報】
Yosuke Isoda, Thanh Ngoc Pham, Ryotaro Aso, Shuri Nakamizo, Takuya Majima, Saburo Hosokawa, Kiyofumi Nitta, Yoshitada Morikawa, Yuichi Shimakawa, Daisuke Kan (2025). Stabilization of oxygen vacancy ordering and electrochemical-proton-insertion-and-extraction-induced large resistance modulation in strontium iron cobalt oxides Sr(Fe,Co)Oy. Nature Communications, 16, 1, 56.
メディア掲載情報

日刊工業新聞(1月17日 33面)に掲載されました。