※ 本文を一部修正しました。(2024年12月16日)
量子力学の原理を用いて計算を行う量子コンピュータは、特定の問題を現在のコンピュータよりも高速に解くことができるとされ、盛んに研究開発が行われています。量子コンピュータの様々な実装方式の中でも、中性冷却原子を用いた方式は大規模化が容易であることや量子ビット間の接続性の良さから近年注目度が高まっています。しかし、この系では大規模な量子計算に必要な量子誤り訂正を行うための補助的な量子ビットの読み出しを、データを保持する量子ビットに影響を与えずに行うことが困難でした。
中村勇真 理学研究科博士課程学生、高橋義朗 同教授、高野哲至 同特定准教授、高須洋介 同准教授らの研究グループは、量子ビットとして優れた性質を持つイッテルビウム原子の2種類の同位体をそれぞれ補助量子ビットおよびデータ量子ビットとして用いる手法を開発しました。この方法により、データ量子ビットに影響を与えない補助量子ビットの読み出しが可能になることを実証しました。これにより中性原子型量子コンピュータにおいて量子誤り訂正の実装が容易になり、量子コンピュータの実用化が加速すると期待されます。
本研究成果は、2024年12月10日に、国際学術誌「Physical Review X」にオンライン掲載されました。
「中性原子型量子コンピュータは他の系に比べて歴史が浅いですが、非常に競争が激しく日進月歩で発展しています。そのような中でも実用化において重要な鍵である量子誤り訂正の実現を加速させられる貢献ができたことをうれしく思います。」(中村勇真)
【DOI】
https://doi.org/10.1103/PhysRevX.14.041062
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/290900
【書誌情報】
Yuma Nakamura, Toshi Kusano, Rei Yokoyama, Keito Saito, Koichiro Higashi, Naoya Ozawa, Tetsushi Takano, Yosuke Takasu, Yoshiro Takahashi (2024). Hybrid Atom Tweezer Array of Nuclear Spin and Optical Clock Qubits. Physical Review X, 14, 4, 041062.
日本経済新聞(12月10日 16面)に掲載されました。