鈴木実 複合原子力科学研究所教授は、小成田翔 東京大学特別研究学生、野本貴大 同准教授らとの共同研究で、液体のりに使われるポリビニルアルコール(PVA)を、今までがん治療には有用でないとされていた化合物に加えるだけで、臨床で使われている薬よりもはるかに優れたがんへの選択的集積性と滞留性を示すことを発見しました。この発見を、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に応用したところ、マウスの皮下腫瘍をほぼ消失させることに成功しました。今回、小成田特別研究学生、野本准教授らが開発した薬剤は、従来のBNCT用薬剤と比較して正常組織への移行性が極めて低く、BNCTの適応拡大につながることが期待されています。本技術の実用化を目指し、日本医療研究開発機構(AMED)次世代がん医療加速化研究事業(P-PROMOTE)の支援を受け、東京大学とステラファーマ株式会社(BNCT用医薬品を製造販売する企業)が共同研究を推進しています。
本研究成果は、2024年12月3日に、国際学術誌「Journal of Controlled Release」にオンライン掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.jconrel.2024.11.017
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/290934
【書誌情報】
Kakeru Konarita, Kaito Kanamori, Minoru Suzuki, Daiki Tokura, Shota Tanaka, Yuto Honda, Nobuhiro Nishiyama, Takahiro Nomoto (2025). Poly(vinyl alcohol) potentiating an inert D-amino acid-based drug for boron neutron capture therapy. Journal of Controlled Release, 377, 385-396.