腸管病原性大腸菌排除の起点となる樹状細胞を発見

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 腸管病原性大腸菌は大腸に感染することで、下痢や嘔吐などの消化器症状を引き起こす原因菌です。この感染症は重症化することも多く、感染した子供や高齢者が死亡に至るケースも少なくありません。これら症状の重篤化を防ぐために、腸管に感染した細菌を排除するための詳細な免疫反応を解明することが期待されています。 

 廣田圭司 医生物学研究所准教授、小原乃也 同博士課程学生、近藤玄 同教授、渡邊仁美 同助教らの研究グループは、腸管病原性大腸菌の排除の起点となる炎症性サイトカインの一つのインターロイキンー23(IL-23)を産生する樹状細胞の一群を発見しました。本研究グループは、独自にIL-23産生細胞を可視化する遺伝子組み換えマウスを開発し、腸管病原性大腸菌排除に重要であるサイトカインIL-23を多量に産生する新しい樹状細胞集団を同定しました。この樹状細胞は免疫細胞が多く存在する腸管の絨毛や陰窩ではなく、腸管関連リンパ組織という構造に分布していることが分かりました。さらに、この樹状細胞のIL-23産生機能の獲得にはNotch2及びビタミンAシグナルが必要であることを明らかにしました。本研究は、腸管病原性大腸菌感染から体を守ることに特化した樹状細胞の発生や分化に関わる重要な知見を提供します。

 本研究成果は、2024年1月5日に、国際学術誌「Journal of Experimental Medicine」にオンライン掲載されました。

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本研究の概要図(Created with Biorender.com)
①Notch2による初期分化、②ビタミンA代謝物の刺激を経ることでIL-23産生樹状細胞が発生する。③これらの細胞が腸管関連リンパ組織で腸管病原性大腸菌の侵入を認識すると、多量のIL-23が分泌され、病原菌が排除される免疫応答が引き起こされる。
研究者のコメント

「IL-23は腸管病原性大腸菌のみならず、真菌や結核感染の排除にも重要な炎症性メディエーターです。一方で、IL-23が炎症性腸疾患や乾癬などの自己免疫疾患の発症・増悪に深く関与していることが分かっています。今回開発したIL-23レポーターマウスを用いてこれらの病態の研究を進めることで、感染症や自己免疫疾患に対する新規予防法・治療法の開発に貢献したいと考えております。」(小原乃也)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1084/jem.20230923

【書誌情報】
Daiya Ohara, Yusuke Takeuchi, Hitomi Watanabe, Yoonha Lee, Hiroki Mukoyama, Toshiaki Ohteki, Gen Kondoh, Keiji Hirota (2024). Notch2 with retinoic acid license IL-23 expression by intestinal EpCAM+ DCIR2+ cDC2s in mice. Journal of Experimental Medicine, 221(2):e20230923.

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