株式市場での注文流の長期記憶性の起源解明―18年来の理論的予言をデータ解析で実証―

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 佐藤優輝 理学研究科博士課程学生と金澤輝代士 同准教授は、金融市場における成行注文流の長期記憶性と、その微視的起源をデータ解析によって明らかにしました。また、当該分野で18年間未検証だった理論的予言を実証しました。

 株式市場では多数の株が売り買いされますが、価格を指定しない即座に売買を行う注文を「成行注文」と言います。株式市場での将来価格の予測は困難な一方で、成行注文の流れは非常に長期に渡って予測可能であることが経験的に知られています。では、この現象は何故生じているのでしょうか。現在の学説では「機関投資家が、大口注文をゆっくり分割発注しているからだ」と言われています。2005年、この分割発注仮説に基づいた数理モデルが3名の物理学者、Lillo、Mike、Farmer(LMF)によって提案されました。彼らは数理モデルに基づき、成行注文流の長期記憶性の強さを定量的に予言する公式を提案しました。しかし、本予言を検証するためのデータ解析は容易でなく、未解決でした。

 本研究グループは東京証券取引所のミクロデータを分析、注文分割仮説を詳細に検証することで、LMF等の理論的予言を実証しました。本研究は、例えば市場流動性を新たな角度から捉えるなど、市場運営に有用な知見を創出する可能性がある成果です。

 本研究成果は、2023年11月8日に、国際学術誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載されました。

文章を入れてください
株式市場で遍く観測される「成行注文の長期記憶性」。買いの成行注文を+1、売りの成り行き注文を-1で符号化すると、売買の符号時系列には弱い予測可能性があり、同じ種類の符号が長期に渡って少し観測されやすい。学説では、機関投資家が分割発注を行っているからだと言われている。
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.131.197401

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/286031

【書誌情報】
Yuki Sato, Kiyoshi Kanazawa (2023). Inferring Microscopic Financial Information from the Long Memory in Market-Order Flow: A Quantitative Test of the Lillo-Mike-Farmer Model. Physical Review Letters, 131(19):197401.