クォーク4個から成る「純粋テトラクォーク」―加速器実験で見えた新粒子をスーパーコンピュータ「富岳」で解明―

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 青木慎也 基礎物理学研究所教授、土井琢身 理化学研究所専任研究員、初田哲男 同プログラムディレクター、リュー・ヤン 同研修生(研究当時)、池田陽一 大阪大学教授らの国際共同研究グループは、クォーク4個から成る純粋テトラクォーク状態Tccの性質を理論的に解明しました。本研究成果は、素粒子クォークがどのように組み合わさった状態が物質として存在できるのかという、現代物理学の根源的問題の解明に貢献すると期待されます。

 クォークは物質の基本構成要素となる素粒子です。これまで、クォーク2個から成る中間子、3個から成るバリオンが実験で観測されてきました。クォーク4個、5個…といったそれ以外の組み合わせの状態が存在するかは長年の謎でした。しかし、2022年にLHCb加速器実験で発見されたTcc状態は、純粋にクォーク4個から構成されるテトラクォーク状態と考えられており、その性質の解明が求められていました。

 今回、国際共同研究グループは、Tccについてクォークの基礎理論である量子色力学(QCD)に基づいた理論研究を行いました。スーパーコンピュータ「富岳」を用いた大規模数値シミュレーションの結果、Tccの構成要素としてD中間子とD*中間子の間に強い引力が働くことを明らかにし、この2つの中間子が結びつくことでテトラクォーク状態Tccが形成されることを解明しました。

 本研究成果は、2023年10月16日に、国際学術誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載され、同誌の「Editors' Suggestion」(特に重要かつ興味深い論文)に選ばれました。

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純粋テトラクォークTcc

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.131.161901

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/285592

【書誌情報】
Yan Lyu, Sinya Aoki, Takumi Doi, Tetsuo Hatsuda, Yoichi Ikeda, Jie Meng (2023). Doubly Charmed Tetraquark Tcc+ from Lattice QCD near Physical Point. Physical Review Letters, 131(16):161901 .