ありふれた脳の白質病変がMRI画像解析を悪化させていた―従来手法に機械学習を組み入れた改善手法の開発―

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 大井由貴 医学研究科博士課程学生と花川隆 同教授、林拓也 理化学研究所チームリーダーらの研究グループは、脳の白質病変が脳表面の画像解析におよぼす悪影響を発見し、機械学習を用いて皮質表面解析の精度を向上する手法を開発しました。

 大脳皮質の機能を理解する手法の一つに、MRI画像を使った皮質表面解析があります。高齢者のMRIには白質病変がみられますが、白質病変が画像解析に与える影響はあまり注目されていませんでした。白質病変はMRI画像上で大脳皮質と似た色調を持つため、従来の解析では誤認識が起こる可能性があります。この研究では機械学習を使って白質病変を検出し、皮質白質境界の誤判定を修正する新しいプログラムを開発しました。このプログラムは特に白質病変が多い場合に効果的で、皮質表面解析の精度を向上させました。将来的には認知症の病態解明や個別化医療に寄与する可能性があります。

 本研究成果は、2023年9月21日に、国際学術誌「NeuroImage」にオンライン掲載されました。

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上段は、従来の皮質表面解析において発生している推定誤差の例です。T1強調画像(A)およびT2強調FLAIR画像(B)上の画像は、左前頭部の白質病変(黄色の矢印)が白質表面(緑色の線)と皮質表面(青色の線)のエラーを引き起こしていることを示しています。
研究者のコメント

「本研究は高齢者の脳の画像解析時にエラーを見つけたことからはじまりました。多くの研究者が皮質解析に注目していますが、皮質解析の誤差やその原因は今まで検討されてきませんでした。本学は日本で最初に神経内科学の臨床講座が開設された大学であり、初代の亀山正邦教授は最終講義で白質病変の重要性を指摘されていました。本研究では白質病変に注目することで最新のMRI解析のエラーを改善させることができましたが、温故知新の精神に従い、白質病変に注目することで解決できる問題はこの問題以外にも多数存在すると考えています。」

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.neuroimage.2023.120377

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/285323

【書誌情報】
Yuki Oi, Masakazu Hirose, Hiroki Togo, Kenji Yoshinaga, Thai Akasaka, Tomohisa Okada, Toshihiko Aso, Ryosuke Takahashi, Matthew F. Glasser, Takuya Hayashi, Takashi Hanakawa (2023). Identifying and reverting the adverse effects of white matter hyperintensities on cortical surface analyses. NeuroImage, 281:120377.