細胞外小胞の軌跡を照らす-細胞外小胞の標的細胞への取り込み機構の解明に貢献-

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 李優嘉 薬学研究科大学院生(研究当時)、金尾英佑 同助教、石濱泰 同教授、今見考志 理化学研究所ユニットリーダーらの共同研究グループは、細胞外小胞(EV)が標的細胞に取り込まれる過程において、EVと近接するタンパク質を包括的に同定する技術の開発に成功しました。

 本研究成果は、EVの標的細胞への取り込み機構の分子レベルでの理解やその応用(ドラッグデリバリーなど)に貢献すると期待できます。EVは細胞から放出される、タンパク質や核酸などの生体分子を内包する膜小胞です。EVを介してその内包物が細胞間で移行し、細胞間情報伝達の役割を担う可能性が示されています。しかし、細胞外のEVがどのようにして標的細胞内に取り込まれるのかについては不明な点が多く残されています。

 今回、共同研究グループは、数十ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)に近接するタンパク質にビオチン化標識を施す酵素(TurboID)を搭載した、特殊なEV(改良型EV)をヒト培養細胞に産出させることに成功しました。これによって、EVが標的細胞に取り込まれる際に、近接するタンパク質をビオチン化標識できます。さらに、独自のプロテオミクス解析技術を組み合わせることで、EV取り込みに関与する標識タンパク質を包括的に同定することに成功しました。本技術により、EV取り込み過程に関わる新しいタンパク質の存在が明らかになりました。

 本研究成果は、2023年9月15日に、国際学術誌「Analytical Chemistry」にオンライン掲載されました。

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改良型細胞外小胞が細胞に取り込まれる軌跡が化学標識(ビオチン)によって照らされる概念図
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1021/acs.analchem.3c01015

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/285240

【書誌情報】
Yuka Li, Eisuke Kanao, Tomoyoshi Yamano, Yasushi Ishihama, Koshi Imami (2023). TurboID-EV: Proteomic Mapping of Recipient Cellular Proteins Proximal to Small Extracellular Vesicles. Analytical Chemistry, 95(38), 14159–14164.