消化管ムチンを食べるビフィズス菌―ビフィズス菌が有する硫酸化ムチン分解酵素の発見―

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 我々の健康や疾患に深く関与する腸内細菌叢は、食事に含まれる成分だけでなく腸管上皮細胞から分泌される粘液由来の成分によっても影響を受け、その菌叢組成が変動します。特に、粘液の主成分であるムチンは腸内細菌の栄養源となる多くの糖鎖を有するため、この糖鎖がどのように腸内細菌に利用され菌叢に影響を及ぼすのかその代謝メカニズムの解明が待たれていました。

 今回、加藤紀彦 生命科学研究科助教、片山高嶺 同教授、木村郁夫 同教授、伏信進矢 東京大学教授らのグループは、東京大学、西オーストラリア大学、ワーゲニンゲン大学、北里大学、近畿大学、滋賀県立大学との共同研究で、ヒト常在性ビフィズス菌Bifidobacterium bifidum由来の酵素スルフォグリコシダーゼ(BbhII)に関して、マウスを用いた生体内機能解析、ヒト糞便の解析、およびタンパク質X線構造解析によって、本酵素依存的な硫酸化ムチン糖鎖の分解機構について明らかにしました。さらにムチン分解性の腸内細菌にはCBM依存的にムチンを分解するグループがあることを見出し、腸内ムチン分解様式にあらたな概念を提唱しました。本研究結果はヒト腸管から分泌されるムチンの腸内細菌叢形成への関与の一端を明らかにするもので、より健康な社会づくりへの基盤的知見を提供すると期待されます。

 本研究成果は、2023年3月2日に、国際学術誌「Nature Chemical Biology」にオンライン掲載されました。

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書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41589-023-01272-y

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/285181

【書誌情報】
Toshihiko Katoh, Chihaya Yamada, Michael D. Wallace, Ayako Yoshida, Aina Gotoh, Moe Arai, Takako Maeshibu, Toma Kashima, Arno Hagenbeek, Miriam N. Ojima, Hiromi Takada, Mikiyasu Sakanaka, Hidenori Shimizu, Keita Nishiyama, Hisashi Ashida, Junko Hirose, Maria Suarez-Diez, Makoto Nishiyama, Ikuo Kimura, Keith A. Stubbs, Shinya Fushinobu, Takane Katayama (2023). A bacterial sulfoglycosidase highlights mucin O-glycan breakdown in the gut ecosystem. Nature Chemical Biology, 19(6), 778–789.

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