超新星の電波再増光が示す連星進化の道筋

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 前田啓一 理学研究科教授(研究当時:同准教授)らの国際研究チームは、アルマ望遠鏡で超新星SN2018ivcの長期モニタリング観測を実施し、超新星からの電波発光が弱まった後、約1年経過後からミリ波帯で再増光したことを発見しました。理論モデルと比較することで、この大質量星が、爆発前の一生の末期に連星相互作用の影響を受け星の表面のガスを周囲に撒き散らした末に終焉を迎えたことが分かりました。このような電波再増光を示す超新星の発見は、大質量星進化における連星進化の役割を体系的に理解する上で、重要な成果です。

 本研究成果は、2023年3月1日に、天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に掲載されました。

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超新星爆発前後の想像図。
​(​​​​​1枚目)画面中央のオレンジ色の星が将来超新星爆発を起こす。青色の星はその伴星。(2枚目)伴星との重力相互作用によって爆発直前(爆発の約1500年前)に星周物質がばら撒かれる。(3枚目)超新星爆発の瞬間。(4枚目)爆発で飛び散った星の残骸が時間差で星周物質に届き、約1年後以降に電波再増光として観測された。
An illustration of a supernova before and after its explosion. (First image) The orange star in the center of the screen will eventually undergo a supernova explosion. The blue star is its companion. (Second image) The material surrounding the star is scattered due to gravitational interaction with its companion, about 1500 years before the explosion. (Third image) The moment of the supernova explosion. (Fourth image) The debris of the exploded star reaches the material surrounding it with a time delay, and is observed as a radio wave flare about a year later.
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), K. Maeda et al.

研究者のコメント

「銀河系外超新星のミリメートル域電波観測は困難が伴い、これまでほとんど観測例がありません。アルマ望遠鏡という、他の追随を許さない能力を持つミリメートル電波望遠鏡により初めて可能となりました。現在もアルマ望遠鏡による超新星観測プログラムが採択されており、今後は京都大学せいめい望遠鏡などにより取得される可視域のデータと合わせて、恒星進化や超新星爆発機構の未解明問題にさらに深く迫れるものと期待しています。」(前田啓一)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.3847/2041-8213/acb25e

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/279555

【書誌情報】
Keiichi Maeda, Tomonari Michiyama, Poonam Chandra, Stuart Ryder, Hanindyo Kuncarayakti, Daichi Hiramatsu, Masatoshi Imanishi (2023). Resurrection of Type IIL Supernova 2018ivc: Implications for a Binary Evolution Sequence Connecting Hydrogen-rich and Hydrogen-poor Progenitors. The Astrophysical Journal Letters, 945(1):L3.