海洋微生物も”密”ならウイルスに感染する-頻度依存的なウイルス感染を大阪湾で実証-

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 ウイルス感染は地球上のあらゆる生物に起きると考えられます。しかし、目に見えない海洋微生物の場合、その大半は分離することが難しく、優占種であっても実際にウイルス感染の有無を観察するのは困難です。富永賢人 農学研究科博士課程学生(現:東京大学特任研究員)と吉田天士 同教授らは、緒方博之 化学研究所教授、山本圭吾 大阪府立環境農林水産総合研究所主任研究員らとの共同研究で、大阪湾を定点として、原核微生物とウイルスの動態を約2年間月ごとに追跡しました。そして大阪湾での原核生物とウイルスの季節動態と、ゲノム配列情報を利用したウイルスの宿主予測の比較により、6,000を超える原核生物の優占種とウイルスの感染ペアを明らかにしました。この結果は、原核生物の分類群や季節動態に関係なく、優占種にはウイルス感染が普遍的に起こることを示唆しています。本研究により、ウイルス感染は、優占種の溶菌・死滅を通じて地球規模の物質循環や微生物群集組成に影響を与える重要な生態学的なプロセスだと改めて支持されました。

 本研究成果は、2023年2月1日に、国際学術雑誌「mSystems」においてオンライン公開されました。

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研究者のコメント

本研究は、大阪湾という身近な環境での観察結果から、ウイルスと微生物の関係についての普遍的なメッセージを見出すことができたのとても良かった点だと思っています。今後も、私たちの視界には入っているけれど、“見えて”はいない微生物の世界を解き明かしていければと思っています(富永賢人)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1128/msystems.00931-22
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/279505
【書誌情報】
Kento Tominaga, Nana Ogawa-Haruki, Yosuke Nishimura, Hiroyasu Watai, Keigo Yamamoto, Hiroyuki Ogata, Takashi Yoshida (2023). Prevalence of Viral Frequency-Dependent Infection in Coastal Marine Prokaryotes Revealed Using Monthly Time Series Virome Analysis. mSystems, 8(1):e00931-22.