新型コロナウイルスを中和するアルパカ抗体―マウス実験で有効性を確認―

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 高折晃史 医学研究科教授、保富康宏 医薬基盤・健康・栄養研究所センター長、株式会社COGNANO(コグナノ)等の研究グループは横浜市立大学、東京大学の研究グループとの共同研究により、新型コロナウイルスの「懸念される変異株(VOC:variant of concern)」である「オミクロン株(B.1.1.529, BA系統)」を含む変異株に対して高い中和活性を示すナノボディ抗体であるP17およびP86を三量体化することで、その中和活性を向上したTP17およびTP86抗体を創出しました。さらに、新型コロナウイルスの受容体であるACE2を発現する遺伝子改変マウスを用いた動物実験を行い、致死量の新型コロナウイルスを感染させた遺伝子改変マウスにこれらの2種類のナノボディ抗体カクテルを経気道的に1回投与することでその体重減少を抑制し、その生存期間を延長することを確認しました。
 以上の成果は新型コロナウイルス感染後に三量体化ナノボディ抗体カクテルの経気道投与により治療効果が得られたり、さらにウイルス曝露後に重症化予防として投与することができる可能性を示しています。

 本研究成果は、2022年11月26日に、科学雑誌「Communications Medicine」にオンライン掲載されました。

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三量体ナノボディ抗体(TP17およびTP86)の新型コロナウイルスへの中和活性
二量体化ナノボディ抗体(DP17およびDP86)と三量体化ナノボディ抗体(TP17およびTP86)の新型コロナウイルス株に対する中和活性の比較(上図)、TP86とソトロビマブの中和活性の比較(下図)
研究者のコメント

「ナノボディ技術を使用することで、従来のヒト抗体では成し得なかった広い中和活性をもつ抗体を開発し、そのエピトープを同定した。今後、新たなCOVID-19治療薬の開発につなげると同時に、本技術を新たな感染症治療に対応可能なパイプラインにしたい。」(高折晃史)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s43856-022-00213-5

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/279369

【書誌情報】
Kayoko Nagata, Daichi Utsumi, Masamitsu N. Asaka, Ryota Maeda, Kotaro Shirakawa, Yasuhiro Kazuma, Ryosuke Nomura, Yoshihito Horisawa, Yohei Yanagida, Yugo Kawai, Kei Sato, Yutaro Yamaoka, Kei Miyakawa, Akihide Ryo, Yasuhiro Yasutomi, Akihiro Imura, Akifumi Takaori-Kondo (2023). Intratracheal trimerized nanobody cocktail administration suppresses weight loss and prolongs survival of SARS-CoV-2 infected mice. Communications Medicine, 2:152.