がんに起因して起こる宿主の肝臓の急性期応答と炎症-血清アミロイドαは乳がんモデルにおける肝臓の炎症の原因ではない-

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 がんをもつ個体では肝臓で急性期応答と炎症が起こることが知られています。急性期応答とは、感染やがんなどによって肝臓で急性期応答タンパク質が作られ、これらのタンパク質濃度が血中で著しく増えることをいいます。血清アミロイドαは急性期応答タンパク質の代表の一つです。これらのタンパク質は炎症を惹起すると考えられています。実際、血清アミロイドαと炎症マーカーの量は強く相関します。その一方で、がんをもつ個体の肝臓における炎症に対して血清アミロイドαがどの程度寄与するのかについての検討は十分ではありませんでした。

 河岡慎平 医生物学研究所特定准教授(兼務:東北大学准教授)と河口浩介 医学部附属病院助教の研究チームは、血清アミロイドαを完全に失わせたマウスを作製し、血清アミロイドαががんによる肝臓の炎症に重要なのかどうかを検証しました。その結果、血清アミロイドαがなくても肝臓の炎症が起こることがわかりました。この発見は、遺伝子発現レベルでの因果関係があるように見えても機能的な因果関係がない場合があることを示す例といえます。本研究により、がんが引き起こす炎症と急性期応答の因果関係に関する理解が深まることが期待されます。

 本研究成果は、2023年2月3日に、学術誌「Frontiers in Immunology」に掲載されました。

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Saa1およびSaa2の発現量と免疫細胞マーカーの発現量との強い相関
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.3389/fimmu.2023.1097788

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/279138

【書誌情報】
Chenfeng He, Riyo Konishi, Ayano Harata, Yuki Nakamura, Rin Mizuno, Mayuko Yoda, Masakazu Toi, Kosuke Kawaguchi, Shinpei Kawaoka (2023). Serum amyloid alpha 1-2 are not required for liver inflammation in the 4T1 murine breast cancer model. Frontiers in Immunology, 14:1097788.