「しあわせ」の再定義と定量的尺度作成-個人の価値実現のあり方を哲学的に検討-

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 出口康夫 文学研究科教授、大西琢朗 同特定准教授は、廣瀬朋由 株式会社お金のデザイン取締役副会長/ファウンダーとの産学連携共同研究「『しあわせ』の再定義と定量的尺度作成のための調査研究―個人の価値実現をサポートする金融サービスのあり方を哲学的見地から検討」の成果として、このたびホワイトペーパーと関連資料を発表しました。

 本研究は、「お金」だけを扱う従来の金融機関の枠を超えて、より包括的な価値としての「しあわせ」にアプローチしようとする廣瀬氏が、「価値の提案」を哲学のミッションとして掲げ、研究・発信活動を行ってきた出口教授・大西特定准教授に働きかける形で2021年にスタートしました。その後、哲学・心理学・経済学などの従来の幸福研究の成果を踏まえて議論を行い、各個人が自分固有の幸福観を可視化し、それを実現するための適切な意思決定をサポートする尺度「ライフ・インテグレータ」を作成しました。

 今後は、お金のデザインが取り組む資産運用を中心とするさまざまな現場で、本尺度がどのように活用できるかを検討していくことになります。

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本研究イメージ図(イラスト:星野ロビン)
研究者のコメント

「人文学、特に哲学は『新たな価値の提案』の学です。一方、過去1世紀ほど、哲学においても、専門化・細分化―Th.クーンの言葉を借りれば―『通常科学(normal science)化』が進み、このような哲学本来のあり方が見失われる傾向がありました。21世紀も中葉を迎えつつ、一層混迷を深めつつ世界を前にして、哲学は、今一度、『価値提案の膂力』を鍛え直す必要があります。今回の共同研究プロジェクトは、このような『鍛え直し』の一助ともなりうるのではないかと期待しています。」(出口康夫)

「『お金』を通じて、一人ひとりが自分らしく生きることを応援することが会社のビジョンです。(株式会社お金のデザイン Money Design Co., Ltd.のウェブサイト
人生と資産形成とは表裏一体と考えます。無色透明・客観的な価値でしかない『お金』を、自分の『しあわせ』色に染めた『お金』として提案していくことが、今後のあるべき金融機関の使命だと考えています。更に、本研究が資産運用にとどまらず、生活の指針にまで活用できるよう拡張していきたいです。」(廣瀬朋由)

「今回の共同研究は、自分の哲学研究者としてのスキルを活かして新しい領域へと挑戦する貴重な機会となりました。今後は、今回の研究成果をさらに深めていくとともに、この経験を、哲学を含む人文社会科学とビジネス分野との協働拡大につなげることができればと思っています。」(大西琢朗)

研究者情報
書誌情報

【URL】
https://www.money-design.com/news/filedownload.php?name=95a91b7c056fc4afa3dff363099a7f5c.pdf

【書誌情報】
出口康夫, 大西琢朗, 廣瀬朋由. “「しあわせ」の再定義と定量的尺度作成のための調査研究 ~個人の価値実現をサポートする金融サービスのあり方を哲学的見地から検討~”. お金のデザイン. 2022-12.

メディア掲載情報

毎日新聞(2月12日 23面)に掲載されました。