コケに潜るハモグリバエの驚くべき多様性―37種を新種記載―

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 加藤眞 人間・環境学研究科教授と山守瑠奈 フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所助教、今田弓女 愛媛大学助教のグループは、コケの葉状体に潜る、驚くほど多様なハモグリバエ類が日本列島にいることを発見しました。一般的にハモグリバエ類は、幼虫が維管束植物の葉に潜る昆虫で、葉に描かれたその這い跡から、「字書き虫」・「絵描き虫」として知られています。コケに潜るハモグリバエはこれまで、世界でわずかに1種がフランスから記載されていたのみでしたが、今回、日本列島から、実に39種のコケハモグリバエが見つかりました。

 これら39種のコケハモグリバエ類のうち、2種は成虫で記載されてはいたものの寄主植物が不明だった種で、残りの37種は新種でした。コケ植物は、鮮類、苔類、ツノゴケ類という3つの独立のグループからなっていますが、今回発見された39種のうち、36種が苔類に、3種がツノゴケ類に潜っており、そのほとんどが高い寄主特異性を持っていました。この発見は、食植性昆虫の多様化が、維管束植物の上だけではなくコケの上でも、また胞子体の上だけではなく配偶体の上でも、起こったことを示唆しています。

 本研究成果は、2022年11月30日に、国際学術誌「Zookeys」にオンライン掲載されました。

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刈り取りが終わった水田(上段左)と、そこに生えるカンハタケゴケ(上段右、矢印は幼虫)、ニワツノゴケとヤマトツノゴケモドキ(下段左)、羽化してきたニワツノゴケハモグリバエの成虫(下段右)(撮影:加藤 真)

研究者のコメント

「京都市左京区岩倉の村松の谷には、京都で最後の、昔懐かしい里山環境が残っています。その一筆の水田には、刈り取り後にカンハタケゴケとヤマトツノゴケモドキという、1cmたらずの小さなコケが生えていて、それぞれから新種のハモグリバエが羽化してきました。このようにして見つかったのが39種のコケハモグリバエです。」(加藤眞)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.3897/zookeys.1133.94530

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/278697

【書誌情報】
Makoto Kato, Luna Yamamori, Yume Imada (2022). Diversity underfoot of agromyzids (Agromyzidae, Diptera) mining thalli of liverworts and hornworts. ZooKeys, 1133, 1-164.

メディア掲載情報

京都新聞(2月15日 夕刊1面)に掲載されました。