いもち病からイネを守る細胞外タンパク質 (CBMIP) の発見―CBMIPはイネの細胞壁を守り、いもち病菌の感染を抑える―

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 寺内良平 農学研究科教授、竹田匠 岩手生物工学研究センター主任研究員らの共同研究グループは、イネ由来の細胞外タンパク質である CBM1-Interacting Protein(CBMIP)がいもち病菌の特異なタンパク質である Carbo-hydrate Binding Module 1(CBM1)の作用を阻害し、いもち病菌の感染を抑制していることを世界で初めて発見しました。

 いもち病菌はイネなどの穀物に感染するカビです。いもち病菌はイネに感染するため、多糖分解酵素を使い、イネの細胞壁を分解します。特にCBM1を有する多糖分解酵素は、効率的に細胞壁を分解するため、いもち病菌にとっては強力な武器となっています。これに対して、イネは細胞外にCBMIP を分泌し、CBM1の作用を阻害することにより細胞壁の分解を阻止します。これにより、イネはいもち病菌の感染を抑制しています。今後、CBMIPを高度に生産させることにより、病気に強いイネ品種の作出が可能になります。

 本研究成果は、2022年9月29日に、国際学術誌「PLOS Pathogens」にオンライン掲載されました。

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図:​​​CBM1を有する分解酵素が効率的に細胞壁を分解し、いもち病菌は細胞壁を突破する(左)。一方、CBMIP が CBM1と結合し、その機能を阻害すると、いもち病菌は細胞壁を突破できない(右)。

研究者のコメント

「イネが有する新規な耐病性機構の解明であります。」(寺内良平)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1371/journal.ppat.1010792

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/276529

【書誌情報】
Takumi Takeda, Machiko Takahashi, Motoki Shimizu, Yu Sugihara, Tetsuro Yamashita, Hiromasa Saitoh, Koki Fujisaki, Kazuya Ishikawa, Hiroe Utsushi, Eiko Kanzaki, Yuichi Sakamoto, Akira Abe, Ryohei Terauchi (2022). Rice apoplastic CBM1-interacting protein counters blast pathogen invasion by binding conserved carbohydrate binding module 1 motif of fungal proteins. PLOS Pathogens, 18(9):e1010792.