乳児期発症急性リンパ性白血病を5群に分類できることを解明−分子診断法の高精度化と治療の最適化への貢献を期待−

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 乳児期に発症する急性リンパ性白血病(乳児ALL)は、小児期に発症するALLと大きく異なり、約80%にKMT2A融合遺伝子を認めることが特徴です(KMT2A-r乳児ALL)。KMT2A-r乳児ALLは今なお非常に悪性度が高く、生存率が50%前後の難しい疾患です。

 滝田順子 医学研究科教授、小川誠司 同教授、髙木正稔 東京医科歯科大学准教授、磯部知弥 東京大学研究員、佐藤亜以子 同特任研究員らは、KMT2A-r乳児ALL 84例のゲノム・エピゲノム異常の全体像を解明しました。その結果、遺伝子発現、DNAメチル化のパターンから乳児ALLは5群に分類されることを見出し、それぞれの群の遺伝子異常の特徴と臨床的特性を明らかにしました。中でも極めて悪性度の高い群として、IRX転写因子の高発現とBリンパ球の最も未分化な発現パターンを特徴とする「IRXタイプ最未分化型」を世界で初めて同定し、この群がRAS経路の異常を高頻度に重複する特徴的な一群であることを示しました。この成果は、乳児ALLの精度の高い分子診断法の開発と治療の最適化の実現に役立つものと期待されます。

 本研究成果は、2022年8月30日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

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本研究の概要

研究者のコメント

KMT2A-r乳児ALLの患者さんにおいて、成長と発達の過程にある乳児期に強力な化学療法を受けることで、例え救命しえたとしても成長障害、臓器障害などの重篤な晩期合併症が深刻な問題となっています。本研究の成果により精度の高い分子診断、治療の層別化により治療の最適化が実現すれば、難治例の予後の改善のみならず、予後良好群の治療の軽減、ひいては晩期合併症を回避することが期待できます。」(滝田順子)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-022-32266-4

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/276078

【書誌情報】
Tomoya Isobe, Masatoshi Takagi, Aiko Sato-Otsubo, Akira Nishimura, Genta Nagae, Chika Yamagishi, Moe Tamura, Yosuke Tanaka, Shuhei Asada, Reina Takeda, Akiho Tsuchiya, Xiaonan Wang, Kenichi Yoshida, Yasuhito Nannya, Hiroo Ueno, Ryo Akazawa, Itaru Kato, Takashi Mikami, Kentaro Watanabe, Masahiro Sekiguchi, Masafumi Seki, Shunsuke Kimura, Mitsuteru Hiwatari, Motohiro Kato, Shiro Fukuda, Kenji Tatsuno, Shuichi Tsutsumi, Akinori Kanai, Toshiya Inaba, Yusuke Shiozawa, Yuichi Shiraishi, Kenichi Chiba, Hiroko Tanaka, Rishi S. Kotecha, Mark N. Cruickshank, Fumihiko Ishikawa, Tomohiro Morio, Mariko Eguchi, Takao Deguchi, Nobutaka Kiyokawa, Yuki Arakawa, Katsuyoshi Koh, Yuki Aoki, Takashi Ishihara, Daisuke Tomizawa, Takako Miyamura, Eiichi Ishii, Shuki Mizutani, Nicola K. Wilson, Berthold Göttgens, Satoru Miyano, Toshio Kitamura, Susumu Goyama, Akihiko Yokoyama, Hiroyuki Aburatani, Seishi Ogawa, Junko Takita (2022). Multi-omics analysis defines highly refractory RAS burdened immature subgroup of infant acute lymphoblastic leukemia. Nature Communications, 13:4501.

メディア掲載情報

読売新聞(11月11日 15面)に掲載されました。