スマートフォンアプリによる睡眠改善の効果を実証―ショート・メッセージによる行動変容技術の有効性―

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 石見拓 医学研究科教授、降籏隆二 学生総合支援機構准教授らは、沖電気工業株式会社、株式会社ヘルステック研究所との共同研究で、不眠症の認知行動療法(CBT-I)を応用したスマートフォン向けのアプリケーションとして、「睡眠プロンプトアプリケーション(SPA)」を開発し、不眠に対する有効性を検証しました。

 研究グループは、プロンプトとよばれるショート・メッセージを、利用者が受容しやすいタイミングで送信することで望ましい行動を誘発する行動変容技術を用いて、CBT-Iを応用したスマートフォン向けのアプリケーションを3者共同で開発しました。

 有効性を検証するために睡眠の問題を自覚する労働者116名(SPAを使用する介入群[n=60]と対照群[n=56])を対象に、介入期間を4週間として並行群間無作為化対照試験を行いました。主要評価項目として不眠重症度質問票(ISI)を測定し、主要評価項目の解析には線形混合モデルを用いました。

 主要評価項目に関して、組入時のISIの平均値は両群ともに9.2でしたが、4週間後の平均値は介入群6.8、対照群8.0であり、ISIの変化の違いは統計学的に有意でした(P=0.03)。これにより睡眠の問題を自覚する労働者を対象とした臨床試験において、SPAの有効性が示されました。

 本研究成果は、2022年7月25日に、国際学術誌「Journal of Medical Internet Research」にオンライン掲載されました。

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本研究の概念図

研究者のコメント

「大学の健康管理部門の仕事をしておりましたので教職員や学生の皆様の健康増進に役立つ研究をしたいと取り組んでまいりました。本研究の成果は、エビデンスに基づいた良質なPHR(パ―ソナルヘルスレコード)によるヘルスケアサービス提供のロールモデルとなると考えています。」(石見拓)

「不眠症の認知行動療法は、薬を使わずに睡眠を改善する有用な治療法ですが、日本の医療機関で実施できる施設は限られています。また不眠による苦痛があっても医療機関を受診されない方も多くいます。この治療のエッセンスを幅広い方に届け、人々の睡眠に改善をもたらす方法を開発することが本研究の目的です。」(降籏隆二)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.2196/36862

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/275607

【書誌情報】
Tomonari Shimamoto, Ryuji Furihata, Yukako Nakagami, Yukiko Tateyama, Daisuke Kobayashi, Kosuke Kiyohara, Taku Iwami (2022). Providing Brief Personalized Therapies for Insomnia Among Workers Using a Sleep Prompt App: Randomized Controlled Trial. Journal of Medical Internet Research, 24(7):e36862.

メディア掲載情報

産経新聞(8月4日 20面)および日刊工業新聞(7月27日 9面)に掲載されました。